玉川学園・玉川大学
ここは日本のお友達との交流の広場です.ゲンボー先生とのやり取りもここで行います.
ゲンボー先生へ.学校の総合的な学習で「稲」の勉強をしています。お父さんにインターネットで調べてもらったら、
ゲンボー先生のホームページがありました。僕も質問があります。
米をとった後の稲の使い方にはどんなものがありますか。できれば、つくりかたも教えてください。
茨城県龍ヶ崎市立川原代小学校5年優輔より
同じ内容の質問を中川小学校の由梨さんからももらいました.
ゲンボー先生
優輔君へ.メールをありがとう.早速お答えします.
お米をとったあとの稲を「藁」(わら)といいます.昔の日本人は物を大切にしましたからワラも大切に利用しました.
1.昔編(江戸時代〜昭和30年ころまで)
蓑(みの)=ワラをかさねて何ケ所かで結んで着る雨具.蒸れずに水を通さないので雨の日の作業や旅行にはとても便利でした.
縄(なわ)=昔のロープはワラをよって作りました.これを荒縄(あらなわ)といいます.いまでも植木をしばったりする時に使われています.木にやさしくくさって自然に帰ってしまうすぐれたせいしつがあります.
草鞋(わらじ)=江戸時代の人は町の中を歩く時は「げた」でしたが,作業をする時や長く歩く時はわらじをはいていました.今でも沢登り(滝を登ったりする登山)では,これをはく人がいます.濡れた岩でもわらじをはくと滑りにくいからです.
雪靴(ゆきぐつ)=今の長靴ですが雪や氷の上でも滑らず,しかも暖かい!雪国のはきものです.
藁灰(わらばい)=ワラを焼いて作った灰は肥料にもなるし,火鉢(ひばち=暖房機具=だんぼうきぐ)にいれて,燃えた炭を長もちさせました.先生も子供の頃にはこれが家にありました.
筵(むしろ)=ワラで作った敷物(しきもの)です.農家の庭先などにひろげて豆を乾燥(かんそう=かわかすこと)させたり,赤ん坊を寝かせたり.お昼ご飯を食べたり,柔らかくて断熱性(だんねつせい=熱を通さない)があったため夏は涼しく冬は暖かいという優れた敷物でした.
納豆のつと=昔納豆はワラでくるんでありました.これはワラにつく枯草菌(こそうきん)が大豆を発酵させてネバネバを作るからなのです.ワラがないと納豆は出来なかったのです.(今は枯草菌から改良された納豆菌を工場でまぜて作ります)
まだまだあるけど,きりがないのでここいらで今編にしましょう.
現代では
1.イチゴやウリ類の畑にしいて,泥はねや虫の害から守る.
2.切りきざんで土にまぜて土壌改良材(どじょうかいりょうざい=土の質をよくする材料)にする.
3.むしろや荒縄を作る(今は高い)
程度かなあ・・・今はプラスチックなど新しい素材が出来たため,ワラの活躍する場面はう〜んと少なくなりました.しかしワラは自然に優しかったり,保温性や滑らないという性質があるため.もう一度見直される日が必ずくると先生は思っています.
優輔君のまわりにはなにかワラで作ったものがありますか?
ゲンボー先生より
ゲンボー先生
由香さん メールをありがとう.
現在日本人の一人当りの年間消費量(ねんかんしょうひりょう=1年間に食べる量)は60キログラムです.
ですから,単純に計算すると300キログラムですね.つまりスーパーで売っている10キロ袋が30個ということになります.
ただし,これはあくまでも平均で,家族によって大きく違います.小さい子供がいるところでは当然少なくなります.また,ご飯好きの家族が多いと量は増えます.
ちなみに先生の家は6人家族で15歳,12歳,10歳.7歳の子供がいます.月に30キロ食べます.つまり年間360キログラムでちょうど平均と同じです.しかし,良く考えてみると子供が多い割にはお米を食べている方ですね.
君の家はどうですか?
ゲンボー先生
そこで疑問に思ったのが、なぜそんなに栄養があるのに日本人は、あまり食べないのかということです。教えて下さい。
川口市立元郷小学校 友理恵
ゲンボー先生
友理恵 さん メールをありがとう.
ワイルドライスはステーキなどの付け合わせに最高ですね.先生の家にもカナダ産のワイルドライスがあります.ところでワイルドライスはライスといっても「お米」ではないのです.マコモという水辺に育つ植物の一種の種です.
お米のようにはたくさんとれません.ですからワイルドライスは主食にはならないのです.ただし,最近ではテレビや雑誌でずいぶん紹介されるようになりましたから,これからは料理のつけあわせとして,今よりももっと食べられることと思います.
君はどのようにして食べるのが好きですか?
ゲンボー先生
米糠って何なのですか?ぜひ、おしえてください。
ゲンボー先生
メールをありがとう.
米糠はお米を精白する時に出る胚芽の部分と,お米のまわりの皮からできています.田んぼの中で稲が育っているのを見たことがありますか?あの時お米は籾(もみ)につつまれていますね.秋になって稲が黄色くなってしゅうかくされる時もお米は籾につつまれています.
お米を保存するときはこの籾をつけたままにしておきます.こうして倉庫にほかんしておくのです.お米屋さんに出荷(しゅっか=にもつを出すこと)する時は,籾摺り(もみすり=籾をとること)して玄米(げんまい)にします.
玄米は白米にする前のじょうたいのお米です.胚芽(はいが)とまわりにうすい茶色の皮がついています.このままでも食べられますが,蒸さなくてはならないのと,食べた感じが固くて今ではあまり好まれていません.
ところで,日本でお米がさいばいされてから6千年以上たちますが,玄米のまま食べられていた時代のほうがはるかに長いのです.平安時代(今から千年前)になってくらいの高い貴族達がはじめて白米を食べるようになりました.一般の人々が白米を食べるようになったのは江戸時代になってからです.
さて,その玄米から白米を作る時に胚芽と皮の部分をとってしまいます( 胚芽は稲の茎や葉っぱや根っこになる部分で,お米の白い部分は稲が最初に育つときにひつようなえいようの部分です).このことを精白(せいはく)とよびます.米糠は玄米を精白する時に出た胚芽と皮のことだったのです.
昔の人はものを大切にしましたから「糠」もすてずに利用しました.
「野菜の糠漬け」「魚の糠漬け」身体を洗う時に使う「糠袋」(ぬかぶくろ).床や手すりや家の木の部分を磨く「糠袋」など,様々なことに使われました.
糠にはビタミンBがたくさん含まれていて,これが食べ物の保存に良いばかりではなく,健康にとても良いのです.大根なんて糠につけるとビタミンB1の量が12倍にもなります.糠床には乳酸菌(にゅうさんきん)がはんしょくして,この乳酸菌の出す酸(さん)がこれまた保存のはたらきをした上にお腹にもいいのです.ヨーグルトと同じです.
さらに糠には糠油が含まれていて,これで身体を洗うと皮ふがしっとりしてじょうぶになります.木もこれでみがくと中からきれいになっていいきます.床みがきのワックスは表面だけをキレイにしますが,糠油は木の中にまでしみこんでいくからです.
糠にはこれだけの素晴らしい効果があります.昔の人はビタミンとか乳酸菌などのことは知りませんでしたが経験で分かっていたのです.こういうのを「先人の智恵」(せんじんのちえ)といいます.
君も糠漬けを作ったり糠袋にトライしてみてください.もっとよく糠のことが分かると思いますよ.
おまけの話ですが,サラダオイルや綿実油,コーン油など様々な油がありますが,胚芽から作られる米油だけが日本で100%原料がまかなえる油です.
ゲンボー先生
「なぜお米は毎年とれるのか?土地がやせたりしないのか?」と言う宿題が出ました。肥料を入れたりするのかな?と思いましたが、よく分かりません。教えてください。よろしくお願いします。
ゲンボー先生
お米は畑で作ると毎年はできなくなるのです.「水田」(たんぼ)で作るから毎年できるのです.
植物は土の中にある養分と水分を根っこからすい上げて,空気中の炭酸ガス(たんさんがす)とお日様の光で体を作っていきます.体の中でいらなくなった成分(人間でいうとオシッコやウンチかなあ)は根っこをとおしてすてられます.
毎年同じ場所で同じ物を作ると養分がなくなったり,いらないものがたまって,「連作障害」(れんさくしょうがい)といって,その植物ができにくくなります
そこで農家の人は年ごとにちがうものを植えて育てたり,何年か同じものを作ったあとは畑を休ませたりします.
北海道の十勝地方ではトウモロコシと牧草と豆とジャガイモなどを,ローテーションしながら育てていきます.牧草のときに畑が休まります.こういうやりかたを「輪作」(りんさく)といいます.
ところで,お米は輪作でもないのにどうして毎年できるかというと,水田の水が養分を運び,その水がいらなくなった物質を流してしまうからなのです.これはとてもすぐれた農業のほうほうですね.
もちろん,(農家の中にはお米を作っていない時期に肥料を入れているところもありますよ.こうするともっと沢山作ることが出来ますね.)
水田の技術がうまれてからお米の生産量はすごくのびました.日本だと縄文時代の終わりごろから弥生時代ころのことです.これによって村々が強くなりやがて国が出来ていったのです.もちろん戦争もありました.
それ以後,日本の歴史は「お米」を沢山とることが政治や経済の中心になったのです.
おまけの話.お米は麦に比べてカロリーが高いため,同じ畑の広さで沢山の人の食べる分を作ることが出来ます.アジアがヨーロッパや中近東に比べて人口が多いのはお米が主食だったからなのですよ.これも水田の技術のおかげですね.
ゲンボー先生
ゲンボー先生
メールをありがとう.
炒めるという方法には2とおりあります.つまりチャーハンやピラフのように一度お米を炊いてから炒めるもの.お米の状態から炒めるリゾットのようなもの.
食べ物からの消化と吸収は食べ物の性質とかんだり,胃や腸のはたらきのような人間がわのじょうたいによっておおきくちがってきます.しかし,君の質問のように炊いたのと炒めたのと簡単にわりきって考えると,炊いたほうが炒めるよりも消化吸収はいいと思います.
炊いたじょうたいのお米は水分を多くふくんでいて消化されやすい状態ですが,炒めるときには油を使ったり水分がとんでややかたくなるからです.
しかし,しっかりかむと両方とも同じようになってしまいますね.むかしから「ゆっくり」「しっかり」かみなさいと言うのは,そうした理由があるからなのです.
ゲンボー先生