玉川学園・玉川大学
ここは日本のお友達との交流の広場です.ゲンボー先生とのやり取りもここで行います.
僕は小林善範、小学校5年生です。
今学校でお米の事を勉強しています。お米の種類によって色・味がどのように違うのか教えてください。それとお米を美味しくするために工夫している事があれば教えてください。(平成12年5月)
ゲンボー先生
色と味は産地,あるいはそのお米が収穫されてからの時間によって異なります.ですからここではおいしくするための努力と.どうしてそうなったかの歴史的なお話をします.
お米は「タンパク質」と「デンプン」から出来ています.普通に食べるお米はタンパク質が多い方が美味しいといわれています.逆に良いお酒を作るためのお米は「デンプン質」が多い方が良いとされています.酒米で有名な「山田錦」(やまだにしき)はデンプン質がとても多いのです.しかし,この山田錦を炊いて御飯にすると「マズイ」のです.
ところで,昔の人は「うまい」とか「まずい」とかいうまえに,「食べられればいい!」という状態でしたから,田んぼの面積を増やすこと(新田開発といいます)や,多収穫米(たしゅうかくまい=たくさんとれる米のこと),あるいは北国でも作れる耐寒品種(たいかんひんしゅ=寒さに強い種類)の改良に力を入れてきました.
日本のお米の歴史は,いつでも「米不足」の歴史でした.特に第2次世界大戦前後の日本は極端に米が不足し,政府はお米を「公平に」国民にいきわたるように外国からお米を輸入したり,食糧管理法(しょくりょうかんりほう=政府が出来たお米をすべて買い上げ,決まった値段で売るという法律.※戦争前からあった法律です)をてっていしました.ですから昭和40年頃までは「うまい」「まずい」はあまり問題になりませんでした.つまり「食えればよし」ということだったのです.ところが昭和40年ごろからお米が余ってきたのです.国民が御飯だけでなくパンも食べるようになったのと,農民が収入を安定させるためにお米つくりに力を入れたからです.だって,作れば必ず決まった値段でかってくれる作物なんか他にないからです.普通の作物は出来た量や季節によって大きく価格が変化するからです.
で,米が余るといろいろな問題がおきてきました.政府は作ったお米を100%買い上げることを約束していましたから,国の米蔵にはお米があふれかえりました.1年たったお米は「古米」.2年たったお米は「古古米」もっとたったお米は「古古古米」などと,まるでとりの鳴き声みたいな,まずくなって見向きもされないゴミ扱いのお米になってしまいました.
「これでは税金の無駄づかい」と非難された政府は,農民に今度は「もうこれいじょうお米を作るな」といいました.そのためにせっかく作った田んぼや,先祖から受けついできた田んぼの何割かを畑にして他の作物を作らせたり.荒れ地にもどしてしまいました.これを減反と言います.
今度は農民が怒りました.中には減反を無視するものが出てきたり,政府にお米を売らずに直接,業者に販売する農家も出てきました.これはいずれも食糧管理法違反なので政府はそうした農民を取り締まったり裁判にかけました.今から考えると「とてもおかしなはなし」ですね.やがて,政府に売るのではなく「俺んとこの米はうまい」から高くかってくれる業者に売るという農家がどんどん増えてきました.
こうしたお米は食糧管理法があった時代には「やみ米」といって,法律違反になっていましたが,さすがに時代の流れに逆らうことはできずに「自主流通米」(じしゅりゅうつうまい=農家が自由にうっていいお米)という名称をつけて認めることになりました.
ちょうどこのころに日本はグルメブームになりました.人々は多少高くても「おいしいお米」を望むようになりました.それで農家もはりきったわけです.いまではこの自主流通米ということばも死語になりました.
政府は,何とかお米の価格を守りたいと思っていますが,外国からも「ウチの米を買え〜」と迫られています.だって日本のお米は価格の競争がなかったために世界一高いお米になってしまっていたからです.
ウルグアイラウンドと言う取り決めで日本は.外国からのお米の輸入を認めるということを約束しました.これによって「やすい米」が大量に日本に入ってくる日がやってくるのです.今は外国のお米は「まずい」なんて言っていますが,おいしいお米もあります.それに他国でも日本人の味覚を研究して「おいしいお米」を作るにきまっています.実際にアメリカやオーストラリアではその研究がずいぶん進んでいると言われています.
日本の農家も「安くて」「うまい」お米を作らないと売れなくなってしまいます.
さあ,本題に戻るよ.こうしたことから日本でもこの10年くらいで「おいしいお米」の研究が急速にのびてきました.最初にはなした「タンパク質」とか「デンプン」のわりあいはほんの一例です.
日本人のお米に対する味覚は世界一単純で世界一鋭いと言われています.「ふくっら」していて,適当なねばりがあって,かむと「甘味があって」「かおり」がいいなどです.そうしてこれらの特徴をすべてもっているのが,チャンピオンとなった「コシヒカリ」というわけなのです.そのコシヒカリでさえ産地によって「うまさが違う」といわれています.こんどお米やさんかスーパーで見て下さい.高いのはどこのお米かってね・・・で,おいしいお米を作るための努力とは,
1.品種の改良.
これは国や県の農業試験場や大学.あるいは種を作っている会社などが行っています.
2.水の管理.
稲は田植えの時期から出穂期(しゅすいき=穂ができるころ)までに水が多くなくてはなりません.ところが花が咲いて実が出来て成長する時期には反対に田んぼの水は不要になります.台風などの大水やその反対の日照りの年もあるから,この調整が大変です.
3.その水ですが,良い水でなくてはなりませんし.酸素も多いほうがいいのです.で最近は鴨(かも)を田んぼで飼う農家も出てきました.鴨が水をかき混ぜるからだそうです.
4.根がはるために深く耕します.深く耕した分だけ稲の根がのびます.そのあと代掻き(しろかき)といって,たんぼに水をはってから細かい土でならすようにします.こうしないと今度は水がどんどん土の中にしみ込んでしまうからです.
5.春先には土をおこして虫や悪い菌を殺してしまいます.
6.肥料をあげます.最近では有機肥料といって合成肥料ではない自然の肥料を使うようになってきました.
更に自然条件として「昼間は暑く」「夜は涼しい」のがいいんだそうです.このことによってデンプンとタンパク質のわりあいが,理想的になるといわれています.このようにして「おいしいお米」が作られるのです.
ところで,現在おいしいお米と言われているササニシキやキララなんとかとか,華の米とかいうブランド米はすべてコシヒカリの兄弟になります.ですから外国の本には「日本の米は1種類しかない」などといわれるようになってしまいました.
最後に.
外国人に最高においしいと言われる御飯を食べさせてあげても「うまくない」といいます.ところがかわれば味の基準も違うのです.インドや中近東ではパラパラしたお米が好まれます.東アジアである中国/韓国/日本はネバネバ系になりますが,中でも一番のネバネバ系好みが日本ということになります.しかし,日本人の味覚もだんだんと変わってきています.それにバラエティーにも富んできました.(単純じゃないということ)
先生のウチではインドカレーを食べる時は「インディカ米」というパラパラ御飯を炊きます.ピラフやリゾットなんかもほんとうはインディカ米のほうがうまいのです.日本の農家も料理にあわせたお米の栽培ということで,こうしたことに取り組むようになってくるでしょう.
これからさき,日本の農家は価格のこと味のことに加えて,いろんな味のお米にも目を向けなくてはなりません.大変ですね.しかしそうした努力がなければ世の中は進歩しないのです.ここが大切なところです.
ちょっと.難しいところがあるかなあ・・・先生や保護者以外に農家の方に聞くのがいいと先生は思います.時間があったらぜひそうして下さい.
また.メールをください.
ゲンボー先生より
秋田小町探検隊を作って勉強をしています。質問があります。
1.秋田小町は、いつ頃から作られていて、秋田小町という名前になったのは、いつ頃ですか?
2.秋田小町は、全国の何ヶ所で作られていますか?
3.西日本でも作られているのですか?
ゲンボー先生
梨乃さんメールをありがとう.さっそくお答えします.
1.秋田小町は昭和59年に秋田県の農業試験場で作られました.お母さんは「コシヒカリ」お父さんは「奥羽292号」です.秋田小町の本当の名前は「あきたこまち」とひらがなです.
国の試験場で作られた品種にはカタカナ名か「○○〜号」という品種名がつけられます.それ以外の所で作られたものは漢字やひらがなで名前がつけられます.ですから「あきたこまち」が県の農業試験場で,両親はともに国の試験場で作られたということが分かりますね.
ところで,昭和の終わり頃から平成にかけて,お米のブランドイメージが売れ行きに関係するようになると,それぞれに工夫した名前がお米につけられるようになりました.今では「どんとこい!」とか「はなの舞」とか「きらら397」などなど,実に沢山の名前がお米につけられるようになりました.
「あきたこまち」はそうしたお米の中でもお兄さん・・・ちがったお姉さんかぶで,秋田県の人々が智恵を出しあってつけた名前です.今でもお米のネーミングではピカイチと言われています.小町というのは「かわいいお姉さん」という意味ですから,ほんとうに印象(いんしょう)の強い,それでいてやさしい感じの名前ですよね・・今では秋田に行く新幹線にも「こまち」とつけられています.先生もいつか乗りたいと思っています.
2.平成10年の調査では,「あきたこまち」は秋田県・岩手県・山形県・茨城県・千葉県・長野県・岐阜県・三重県・岡山県・愛媛県・高知県で作られています.もしかしたら今年はもっと他の県でも作られているかもしれません.
3.そうですね,上の県名を見るとそういうことになります.ですが基本的に 寒いところのお米なのであまり南では作られてはいないはずです.寒い地方で作られたお米を暖かいところで作ると,出穂期(しゅっすいき=稲の穂が出来るころ)が早まり,気候との関係でまずくなったり,よく出来なかったりします.
あきたこまちは名前のとおりデリケートなのかもしれません・・・・・
わからないことがあったらまたメールをください.
ゲンボー先生