しゅちゅうか
酒中花
Shuchuuka
江戸系 | 【英数】六英 【花色】白 紅覆輪 中輪 【開花時期】6月中旬(2023年は6月16日開花) |
分類 | : | 江戸時代に育成され栽培されてきた「江戸古花」の品種です。 |
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花被 | : | 楕円形、あるいは丸弁で、平咲きで六英、開花が進行するにつれて花被片の先端部が下垂します。花被片全体に細かい皺があります。白色地で、周縁部には紅色の覆輪が見られます。また、白地の花被片の周縁部付近や脈と脈の間にも、しばしば紅紫色の斑点状の模様が見られることがあります。内花被片となる小さな花被片の方が、紅紫色が濃い傾向にあります。 |
花柱枝 | : | 花被片に沿うように発達します。花色は白色ですが、やや黄色味がかった色になることもあります。先端部で裂開して円形のずい弁が発達します。細かい鋸歯が見られますが、目立ちません。先端部に外花被片と同様に紅紫色の覆輪が見られます。 |
備考 | : | 1885年以前(明治18年以前)に菖翁により育成された「菖翁花」であると言われていますが詳細は不明で、明治時代に江戸・堀切の花菖蒲園の一つ、小高園の図に登場することから、この時代に育成されたとする説もあります。伊勢系の古い品種にも同名の品種がありますので分類には注意が必要です。 平咲きで開花が進行する2日目には花被片が下垂します。花被片は厚く、硬い形質で花径は15p〜20pの中輪花に相当します。 本品種は、花色において年次変化が多く、白地に紅紫色の覆輪が入る程度や、その濃淡には年次変化があり、紅紫色の覆輪の幅が広い場合には、「底白」といって、花被片の基部のみが白色に見える場合もあります。「天晴」(肥後古花)」や「八女姿」(肥後古花)などと類似します。花被片の厚さが薄い場合には、紅紫色が淡くなる傾向がありますが、継続した調査を行っています。 本品種のように、六英花で白地に紅紫色の覆輪となる品種は、「舞妓」(肥後古花)、「紅扶養」(肥後古花)、「雲井の雁」(新花、肥後花容)、「七彩の夢」(新花、肥後花容)、「麗月」(肥後古花)、「登竜門」(肥後古花)にも見受けられます。また、三英花にも、このような花色のパターンを持つ品種があります(「立田川」(江戸古花)、「君子国」(肥後古花)、「万子の声」(肥後古花)、など。これらは非常に見分けがつきにくいので、本学では、明治神宮との共同研究で分譲頂いた品種を掲載しました。 なお、本学での研究により、「菖翁花」の「立田川」(三英花)と、本品種「酒中花」(六英花)は花被片数が異なりますが、肥後系品種群の育成に寄与したことが分子生物学的に明らかになっています。いずれの品種も、肥後・満月会品種育成への寄与率は82%、同じく西田信常氏育成の品種群への寄与率は81%ですので、品種の区別がつきにくい原因の一つになっているものと考えられます。 花菖蒲園で見ることのできる品種は、継続した維持・管理がしやすい新花が植栽されているようです。 |
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