花菖蒲の写真撮影は、花全体(花菖蒲では「花容」と呼んでいます)の形状が複雑で、花被片には皺(しわ)があったりすると陰影ができます。また、言葉では表現しにくい花色を持っています。
江戸系品種のように群れて開花している場合、伊勢系や肥後系、アメリカ系のように1つの花の中にこだわりがある場合とでは撮影方法も異なります。花菖蒲を見た時の、あるいは開花した時の天気が雨であったか、晴れであったかによっても全く雰囲気の異なる写真になります。
どのような系統、品種でも撮影者が「もっとも素晴らしい、心に残った」と思った写真が一番綺麗に見えます。花菖蒲は花を観賞しますので、どのような品種でも美しいものです。
もし、花菖蒲の写真撮影に少しの「こだわり」を入れたい場合には、「オーシャンミスト」を参考の1つにしてください。
ここでは、外での撮影とし、天候の異なる時期に角度を変えて撮影、「晴天時」、「雨天〜曇り」としてみました。
晴天時撮影 | 雨天〜曇り時に撮影 |
品種一覧:オーシャンミスト(より多くの写真をご覧いただけます)
花菖蒲の花被片は表皮の上層部と下層部の間に細胞間隙(すきま)が多く存在し、色素は花被片上層部(向軸面)に丸い粒状の細胞中に入っています。この色素の種類が違うので様々な色に見えるのです(Tabuchi,2011)。
「オーシャンミスト」は、白色の地の上に、青い色素を持つ粒状の細胞が乗っていますので、晴天時に光が当たると白色が強く反射して白色の強い写真になり、花被片の表面の模様が見えにくくなります(晴天時撮影を参照)。
雨天〜曇り時に撮影すると、白色よりも水色の部分が目立つようになります。
「オーシャンミスト」=「海の霧」という命名のように品種名にこだわると、雨天時に撮影すると周辺の景色に溶け込んだようにも見えます。好みは個人により多種多様ですので、写真を見比べて参考にしてください。
諏訪原城を参考にご説明します。
白色蛍光灯の屋内で撮影しました。本品種は白色が強く、直射日光の下では花被片が強く反射して白くなってしまい、わずかな絣や筋、縁のフリルを際立たせる陰影が見えにくくなります。平咲きですが外花被の先端部が垂れているため、真上から観賞するよりも、やや斜め上の視点から観賞すると平咲き特有の「肩」に丸みを帯びた美しい形を楽しむことができます。
アルフェロフを参考にご説明します。
雲の切れ間から日が差し込む曇天下で撮影したものです。本品種は花色が質感のある濃い紫色なので(いわゆるビロード)、全体的に暗くならないようにします。直射日光の下で撮影すると薄い赤紫色になり、ハローの部分の濃い色が表現されにくくなります。伊勢系品種と同様に、垂れ咲きの品種なので、斜め上や真横からの視点で観賞すると立体的な花容構造を表現することができます。