昨今の地球規模の気候変動は、夏場に40℃近い猛暑に遭遇することも多く、高温や潅水した際に鉢内に残った水が「煮え湯」状態となって株の衰弱を招くことになります。
また、真夏の植え替えは健康被害をもたらしかねません。本学では、開花後から梅雨開け頃までには植え替えを完了するようにして貴重な品種株の維持・保護にあたってきました。
梅雨時期の植え替えは、根の活着率が促進され、葉の伸長成長も促進されて翌年開花が見込まれる植物体が増えることに繋がります。この方法で20年間、重品種の維持・保存を行ってきましたので参考にしてください。
一般には、植え替え=株分けとされていますが、植物生理学的には根の状態を確認して、健全な株を1つの鉢内に寄せ植え状態にすることです。品種あたりの株数を増やす場合は、1株ずつに切り分けて栽培しますが、1鉢当たりの株数が多いほど成長速度が早くなります。
品種ごとに間違いなく分類して保存すること、これは最も重要です。そのためには、植木鉢による栽培とし、名札を間違えないようにします。
次に、栽培方法ですが、本学では、黒のビニルポットで(3号=9cm)、土の物理性は「水はけが良好であること」、種類は「腐植質の土を用いないこと」、および管理は「絶対に湛水にしなこと(網棚の上に置き、鉢底からも通気を保つ)」の3点に心がけています。いずれも根腐れを起こさないことへの配慮です。
本学ではバーミキュライトや鹿沼土を利用、株の支え(押さえ)に荒木田土を処理して20年以上良好な結果が得られています。
「伝統的な品種=いわゆる古花」では、根茎の分枝性や発根率をいかにして上げていくかがポイントになります。以下の写真のように開花後は腐敗した根を取り除く作業が、植え替え後の生育に大きく影響を及ぼします。また、植え替えた後、葉の光合成産物の転流により発根促進物質が根茎に移動しますので、葉は切らない事が大切です。葉が大きく成長して倒伏しやすい場合には、株元に荒木田土などを配置して支えるようにしてください。
参考文献:田淵俊人.2009.最新 農業技術 花卉vol.1 ノハナショウブ 農文協,東京.pp319−324.