せきよう
夕陽
Sekiyo
大船(例外) | 【英数】 9英(写真では3段咲き) 【花色】淡い桃色 【開花時期】6月中旬 2024年は6月17日開花 |
分類 | : | 現在の神奈川県立フラワーセンター大船植物園で、宮澤文吾博士によって育成された品種です。平咲きですが外側の花被片は下垂するので、垂れ咲きにも見える9英花です。 |
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花被 | : | 形状は丸弁で外側より内側に向かってサイズが小さくなり、細長い形状に変化します。7弁から9弁めの花被片は筒状になります。したがって、外側の3枚、その内側の3枚、中心部の3枚の花被片が3段になることがあります。 一番外側の弁は丸弁で(6×5cm)、内側の花被片ほど周縁部は波打ち、皺が発達します。 花径は約15cm。淡い桃色の地で、中心部はクリーム色味を帯びた白色です。 雄しべが花被片に変化して筒状になり、花柱枝の中から先端部に向けて筒状の花被片が突き出たような形状をしています。アイの先端は脈に沿って細く長く伸長して目立ちます。 |
花柱枝 | : | 花柱枝は太く発達して、やや斜め上に立ち上がります。色は純白で周縁部は淡い桃色です。先端部は2裂開して、淡い桃色のずい弁が発達します。 ずい弁はやや軸の内側に向かって巻きが中心部に向って巻いており、先端は細かい鋸歯が形成されます。 |
備考 | : | 大正4年(1915年)に当時の神奈川県立農事試験場(現在のフラワーセンター大船植物園)の宮澤文吾博士によって育成されました。 一般に、宮澤博士が育成した品種は江戸系として分類されています。その理由は、大正時代に、江戸系古花の品種同士を交配して育成したからと考えられます。 このホームページでは、1.育成目的が海外輸出用であり明確であったこと、2.大正時代に育成されたこと、3.育成者が宮澤文吾博士であり、神奈川県農事試験場で育成・発表され、現在の「フラワーセンター大船植物園」で植栽されていることから、江戸時代に育成された江戸系古花とは異なる要素を持つので、歴史を感じて鑑賞する価値を残す意味で、敢えて「大船(例外)」と表記しています。 現在、花菖蒲園で最も多く見ることのできる宮澤文吾博士が育成した品種に、「揚羽(あげは)」があります。花菖蒲園では江戸系と名札が立っています。 「夕陽」は、江戸系古花の「熊奮迅」と江戸系の古花、「隅田川」を交配して育成された品種です。本学では、「隅田川」を保有していないので、育成親の両方の形質を科学的な遺伝性などで調査することが不可能ですが、雄しべが花弁化(花被片化)すること、花被片の周縁部が波を打っていること、皺があること、3段に花被片が重なっていることなどの形質は、「熊奮迅(くまふんじん)」に見られる形質です。 宮澤文吾博士の論文によれば、必ずしも3段になることはないように解釈されるので、年次変化を調査していく必要があります。 草丈は50cm程度で、花茎が細い傾向があります。一般には普及していない品種です。花容が9英であること、段を形成し、雄しべが花被片化すること、淡い桃色の品種が大船には少ないようなので、研究用、観賞用として重要と考えています。 なお、写真の上4枚は、雨上がりの晴れ間に撮影したもので、やや白色になっています。下の4枚は、曇り空の元で撮影したもので、桃色がやや濃く見える状態です。 |
参考文献 | : |
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