はつむらさき
初紫
Hatsu murasaki
新花(江戸花容) | 【英数】三英 【花色】紫紺/中輪 【開花時期】5月下旬〜6月上旬(2018年5月31日撮影) |
分類 | : | 新花(江戸花容)の三英花で花径は15cm程度の中輪花 |
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外花被 | : | 平咲きで先端部はやや垂れさがります。花被片の質は硬いので風雨に強いですが、花被片に水滴がかかるとその部分が白く斑点状になりやすいです。紫色で濃い青紫色の筋が入ります。直射日光下では赤紫色、やや日陰では紺色に近い紫色となります。アイの周りのハローは紺色です。アイは大きく円形で鮮やかな黄色なので非常に目立ちます。 |
内花被 | : | さじ状で軸方向に向かって立ち上がります。花色は赤紫色で細い紺色の筋が入ります。 |
花柱枝 | : | 太く短く、紫色でずい弁は2裂開し重なっています。先端部はゆるい鋸歯となり内側に大きく巻いています。 |
備考 | : | 5月下旬から6月上旬に開花する早生の品種で、1953年、伊藤東一氏によって育成された品種です。伊藤東一氏は東京玉川の温室村で東光ナーセリーを経営、種苗、切り花、鉢物の生産や育種に尽力した人物です。ハナショウブに関しては京王遊園(後の京王百花園)に栽植されました。特に江戸系品種に伊勢系を交配した品種などが有名で昭和初期の品種育成に多大な功績を残しました。主な育成品種には、「殊勝、夕富士、雲井鶴」などが知られています。 なお、一見して似ている品種に「長井小紫」と「長井古紫」があります。しかし、「初紫」は、長井の両品種と比べて花色は似ていますが、外花被片は「平咲き」で、花被片の質が硬くてあまり垂れ下がらず、内花被片は幅が広く、黄色のアイの部分が円形で非常に大きく目立つので区別が可能です。 これらの品種は、いずれも「野生のノハナショウブ」の花をそのまま大きくしたような花色、形態的な特徴を持つので、他の品種と簡単に区別ができます。 花菖蒲園でのアンケート調査によれば、より自然の野生のノハナショウブに近い素朴な印象があるという理由で、初めて花菖蒲園に来られる人にも、ベテランの人にも人気のある品種です。 |
参考文献 | : | 田淵俊人.2016.花の品種改良の日本史(柴田道夫監修).悠書館,東京. 245,255. 冨野耕治.1967.花菖蒲.泰文館,東京.75. |