いわしみず
岩清水(緑樹の影)
Iwashimizu (Ryokuju no Kage)
肥後系 | 【花容】やや垂れた平咲き 【英数】六英 【花色】瑠璃色 【開花時期】6月中旬〜下旬(2018年6月20日開花、撮影) |
分類 | : | 肥後系のやや垂れた平咲きの六英花です。 |
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花被片 | : | 外花被、内花被ともに花被の形状は円形で、瑠璃色で花径は非常に大きく20cmになります。花被片は開花時には内花被片は上部に向いていますが、開花2日めには先端部が自然に垂れ気味になります。花被片の基部は白色で底白となり、アイの周辺部は白色です。この白色の部分から花被片の先端部に向かって白色の筋が多くは走るように入ります。白筋の間は瑠璃色地に白色の小さな「まだら模様」が流れるように入ります。花被片は厚いです。 |
花柱枝 | : | 花容全体の大きさと比較して小さく軸方向にやや立ち上がります。白色の地に周縁部は瑠璃色になります。先端部は同じ位置で上限に重なるようにして2裂開し、先端部のずい弁は瑠璃色になります。やや「くも手」様の鋸歯が入ります。 |
備考 | : | 草丈は低く40cmほどで、花径は20cmの巨大輪となります。1890年〜1901年頃(明治23年頃)に肥後(現在の熊本県)の花の愛好家の団体である「満月会」に所属していた小山門喜氏により育成されたと言われています。本品種は、門外不出の品種でしたが、「満月会」の会員であった西田信常氏が横浜で植木業を営むことなり、長年の功績によって「満月会」から若干の品種を譲られました。ただし、「満月会」の規則により「満月会」の品種名は一般公開がされず、その形質も明らかにされていなかったのですが、西田信常氏は本品種を販売するにあたって「満月会」の品種名を用いずに新名称を与えました。したがって、「満月会」の育成品種を「肥後ハナショウブ」、西田信常氏が新改称した品種、およびその育成品種群を「熊本ハナショウブ」と厳密に区別することもあります。現在では両者をまとめていずれも同じ熊本県で育成された品種群であることから、肥後系品種群と称することが多くなっています。現在でも、「満月会」の品種名は不明ですが、わずかに照合できる品種があります。本品種はその内の一つで、「満月会」での品種名は「岩清水(いわしみず)」、西田信常氏による新改称品種名は「緑樹の影(りょくじゅのかげ)」となっています。したがって、「岩清水(満月会)」は「緑樹の影(りょくじゅのかげ)、西田信常氏の新改称名」の2つの品種名を持っていることになります。本品種は、「満月会」育成の肥後系品種をそのまま現在に伝える上で非常に貴重な品種です。「庭燎(ていりょう)」、「三鈷の松(さんこのまつ)」も参考にしてください。 |
参考文献 | : | 富野耕治.1967.ハナショウブ.泰文館,東京.p68 田淵俊人.2016.熊本ハナショウブの改良家―西田信常の業績(監修:柴田道夫,花野品種改良の日本史).悠書館,東京.248−250. |