あさとびらき
朝戸開
Asa to biraki
新花(江戸花容) | 【花容】平咲き 【英数】三英 【花色】鮮やかな青色紫に白筋が入る 【開花時期】 6月初旬から中旬 2018年は6月2日開花 写真の下4枚は品種名は「めざめ」となっていますが、本品種に酷似するので、項目は設けず写真を掲載しました。 |
分類 | : | 昭和になって育成された「新花」で、「江戸花容」です。平咲きの三英花。 |
---|---|---|
外花被 | : | 丸弁で周縁部は波打ちます。鮮やかな青紫色に細い白色の筋が、基部から先端部に向かって入っています。 |
内花被 | : | 細長く直立し、花色は基部と中心部は淡い青紫色か白色、周縁部は鮮やかな青紫色です。 |
花柱枝 | : | 白色で中心部は青紫色の砂子状になります。先端部は2裂開してずい弁が発達します。形状は爪上でやや寝ています。ずい弁は鮮やかな青紫色です。 |
備考 | : | 1969年(昭和44年)に、平尾秀一氏が育成した品種です。類似品種に、「青岳城」、「伊豆の海」、「藍草紙」、「めざめ」があります。これらはお互いに形状、花色ともに非常に類似しており、区別しにくい品種です。「青岳城」、「伊豆の海」および「藍草紙」は形質として区別できる部分がありますが、「朝戸開」と「めざめ」に関しては非常に区別がつきにくく、本学で栽培していても判別できません。したがって、このホームページでは品種別の項目として扱わず、「朝戸開」の下4枚に「めざめ」として登録してある株の写真を掲載しました。この2品種については、一部には育成時に、同一株に異なる品種名が付与されたとの説もあるようです。 学術的には、江戸時代に育成された品種の「朝妻舟」が極めて純粋な青色を示すことから、この品種を基にしてより鮮やかな青色の花菖蒲品種を追求した結果、これらの品種が育成されたことになっています。 平尾秀一氏は、昭和の戦後の混乱期に、花菖蒲ブームを起こすきかっけとなった品種を多く育成した人物で、近年における花菖蒲の育種家として第一人者の一人といえ世界中にも広くその名を知られています。戦後の混乱の中、江戸時代に育成された多くの品種が逸脱していましたが、これらが集められていきました。その中から、特に、豪華絢爛な花菖蒲を花菖蒲園で見たいという目標の基、本来は座敷で観賞するはずの肥後系の品種を、花菖蒲園での観賞にも向くように、風雨にも強く、かつ江戸系品種のように群れて開花する品種を多く育成しました。 戦後の混乱期に、花菖蒲がブームになった時期がありますが、これは平尾氏の功績が非常に大きいと考えられています。現在、江戸時代に育成された品種を敢えて「古花」と呼び、昭和時代に育成された品種を「新花」と呼ぶこともあります。平尾秀一氏は、いわゆる「新花」の品種育成に携わった中心人物の一人と言われています。 園芸学の世界では、多くの園芸品種で青色花色を持つ品種の育成が注目されています。バラなどがその例ですが、花菖蒲ではこのような青色花色を持つ品種があり、三英花は江戸系、六英花は肥後系として存在します。それらのほとんどは平尾氏の育成によるものです。青色の鮮やかさについては、栽培条件により左右されます。 本学では、より鮮明な青色花色を持つ形質の導入を目指し、野生のノハナショウブの中から、青色色素のデルフィニジンを含み、かつフラボノイドやタンニン含量の多い青色品種を育成中です。よって、「朝戸開」と酷似する「めざめ」も研究素材として掲載しました。 |
参考文献 | : | ・平松 渚・中村泰基・田淵俊人.2009a.ノハナショウブの変異性に関する研究(第9報)富士山麓に自生するノハナショウブの青色発現について. 園芸学研究.8(別1) ・平松 渚・中村泰基・吉田祐・田淵俊人.2009b.ノハナショウブの変異性に関する研究(第10報)アルミニウムおよびリン酸処理がノハナショウブの青色花色の発現要因.園芸学研究 8(別1):411. ・田淵俊人.2017.昭和のハナショウブー戦時下における衰退と戦後のハナショウブブーム.『花の品種改良の日本史』柴田道夫編.p255-256.悠書館,東京. |