TOP > 花菖蒲図鑑 > 品種一覧-ま行 > みちのく小町
みちのくこまち
みちのく小町
Michinoku Komachi
野生(例外) | 【花容】垂れ咲き 【英数】三英 【花色】薄い藤色(見え方によっては、淡い藤色) 【開花時期】6月下旬(2021年は6月28日開花) |
外花被 | : | 非常に細長い楕円形で、花被片全体の花色は薄い紫色です。アイの黄色い部分は非常に細長く周縁部は濃い紫色です。アイの周辺部の濃い紫の部分から、先端部に向かって紫色の細い筋が伸びるのが特徴です。 |
---|---|---|
内花被 | : | 非常に細長い形状で、軸方向に垂直に立ち上がります。花色は外花被片と同様に薄い紫色です。 |
花柱枝 | : | 薄い紫色で、先端部にいくにつれ、周縁部がわずかに細い白色の糸覆輪が入ります。先端部は2裂開して、斜め上に立ち上がり、ずい弁を形成します。ずい弁の色は薄い紫色です。 |
備考 | : | 青森県に自生する野生のノハナショウブの実生選抜個体(種子を撒いて、得られた個体の中から観賞価値があると思われる形質を持った個体を選抜)です。野生のノハナショウブは、栽培品種のハナショウブの育成基になった野生種で、わが国の湿地帯などに自生していますが昨今の地球規模の急激な温暖化によって、その自生地は消失しています。現存地域も限られてきている状況です。 この個体は、青森県十和田市の「手づくり村 鯉艸郷(りそうきょう)―5000品種20万株のハナショウブを植栽しています」の代表、中野渡裕生氏が、青森県内に自生していたノハナショウブから種子繁殖し、観賞価値があると認めて「みちのく小町」と命名した「野生種由来の品種」です。内花被片が細く、軸方向に直立しているのが特徴的です。 このように、野生のノハナショウブを品種として扱っているものには、他にも「一迫(いちはざま)」などがあります。 鯉艸郷のある青森県十和田市の気候、土壌条件は、ハナショウブの栽培には非常に適しています。当地では有機質土壌(ピートやバークたい肥)を用いて栽培しているようですが、本学のある町田市ではこれらを用いると高温多湿によって根腐れが生じやすくなります。また、昼と夜の気温差が大きく、この気温差が花被片の厚さ(日持ち)や花色の発現にも大きく影響をしていると考えて研究を継続しています。 なお、本学では、20年来、特に青森県、秋田県、岩手県を中心とした地域に自生するノハナショウブについて現地調査を行っており、標準個体は、外花被片は3枚、内花被片も3枚、花色は紫色のものを多く見出してきました。これらの個体群には形状や花被片数に多くの変異があり、これらの変異の中から、栽培品種のハナショウブが育成されていったものと考えられています。 このような薄い色をした紫色の個体は、特殊な花色を作る色素ができるのではなく、紫色の色素を作る遺伝子が欠損していくことにあることが本学の研究により明らかになりました。後代への遺伝性も明らかになっています。これらの野生種由来の個体は、今後、品種改良を行っていく上で貴重な遺伝資源として重要であり、末永く維持・保存してく必要があると考えています。 宇宙など、江戸時代に育成された菖翁花では、品種改良の基となったノハナショウブの自生地が、本学の研究で明らかにされました。 |
参考文献 | : |
|