きはん
帰帆
Kihan
江戸系 | 【英数】三英 【花色】白色の地に青色のぼかし 中輪 【開花時期】6月上旬から中旬 2021年は5月31日〜6月3日に開花 |
分類 | : | 江戸系の品種で、外花被は丸弁、平咲きの三英花です。 |
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外花被 | : | 形状は円形で丸く、花被片の表面は周縁部で脈が目立ち筋状となり、周縁部はわずかに波打ちます。開花当初はやや内巻きになりますが、その後水平方向に伸展して平滑となります。花色は白色で、よく観察しないとわかりませんが、やや青色のぼかしたような粒状の色(「砂子」とも呼びます)が入る場合があります。アイは濃い黄色で、基部は緑色がかった濃い色をしています。 |
内花被 | : | 形状はさじ状で小さく、斜め上方に向かって立ち上がります。やや内巻きで花被片色は白色、周縁部には明瞭な藤色の糸覆輪があります。 |
花柱枝 | : | 内花被片と同様に小さく、水平方向に伸展します。色は純白色です。先端部は裂開してずい弁が発達します。ずい弁の形状は細長く爪状で、やや上向きになります。先端部は円滑で、白色です。 |
備考 | : | 花茎が細く、草丈も40cm程度のやや小ぶりな品種です。 江戸時代の1856年頃(安政2年頃)、花菖蒲の原型となる江戸系品種を多数育成した松平左金吾(自らを菖翁と称した)が育成した品種であると言われています。菖翁は300品種に及ぶ花菖蒲を育成しました。これらの中から、肥後系品種が育成されたとされています。菖翁から肥後・細川藩に譲られた品種は23品種と言われていますが、それらの1つに本品種、「帰帆」があります。本品種の花柱枝の形状は、三方向に正しく伸びていて、ずい弁(先端部にある花弁に見える部分)が指先のような形状をしています。この形質は肥後系の花菖蒲品種には欠かせない形状の一つになっています。 肥後系の品種では花柱枝が太く白色であること、雌ずい、雄ずいがともに正しく並び、整然としていることが要求されます。これを「正花(せいか)」と呼んでいます(→庭燎を参照)。本品種の花柱枝は細く、小さいですが、形状には肥後系の特徴を表す形質を認めることができます。 本品種は、本学においては、比較的生育旺盛な部類です。 |
文献 | : | 田淵俊人(2016).花の品種改良の日本史.柴田道夫(編).ハナショウブ. p.246-248. 悠書館,東京. |