しょうらい
松籟
Shorai
新花(伊勢花容) | 【花容】垂れ咲き 【英数】三英 【花色】藤紫色 花径は15cm。 【開花時期】6月初旬〜6月中旬(2018年6月3日撮影)。2022年は6月4日開花。2024年は5月29日開花。 |
分類 | : | 新花(伊勢花容)の品種。垂れ咲きの三英花です。 |
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外花被 | : | 外花被は藤紫色で、花被片全体に細かい縮緬状構造(皺)が非常に発達しています。丸弁で大きく(1枚あたり8cm×8cm)、特に周縁部は波を打つようにゆるやかにカーブを描き、花被片は花柱枝の先端からまっすぐに下垂します。花被片は非常に薄い構造をしています。脈は濃い藤紫色で細く目立ちません。アイは非常に細く、外花被片に沿って下垂します。 |
内花被 | : | 楕円形で非常に幅広く、非常に大きく見えます(1弁あたり5×3cm)。開花当初は直立していますが寝た状態になることもあります。このような開花後の花被の変化が生じる現象は、肥後系品種と共通するものがあります。花色は外花被よりも薄い藤紫色で目立ちます。細かい皺が入り、桃色の脈が入ります。 |
花柱枝 | : | 白色で花柱枝の軸の中心、すなわち結合部は黄色になります。中心部には筋が目立ち、花柱枝の途中から2裂開し先端部のずい弁に向かって裂開します。周縁部には外花被片と同じ藤紫色です。ずい弁は寝るか、内巻きとなりますが個体差があります。ずい弁の色は藤紫色で周縁部には「くも手」と呼ばれる、ぎざぎざ状に見える鋸歯構造が発達します。 |
備考 | : | 1956年、三重大学の冨野耕治氏によって育成されました。伊勢ハナショウブ(伊勢系)は、江戸時代に伊勢(現在の三重県)の松阪地方に在住の紀州藩士・吉井定五郎によって育成されたと言われている品種群です。一般に知られるようになったのは戦後のことで、冨野氏は当時、一般には知られていなかった三重県・松阪地方や津市の「伊勢ハナショウブ」を広く紹介し、多くの品種を育成した人物として知られています。また、ハナショウブの全般に関わる栽培理論を科学的根拠に基づいて体系化した初めての研究者としても知られています。 本品種の草丈は50cm程度で低く、藤色で花被片は大きく下垂し、弁は非常に薄いです。花被片に細かい縮緬状構造が良く発達する品種です。また、内花被が花容に対して非常に大きく目立つ品種で、花色は日陰では外花被片よりも薄く、時には藤色がかった桃色に見えることもあります。葉は柔らかく垂れます。 本学では、伊勢系品種の花被片が「皺」になるメカニズムを研究しています。また、伊勢ハナショウブの起源については、三重県一帯に自生するノハナショウブから育成したとする説、参勤交代の折に江戸から持ち帰って交配したとする説がありますが、本学での分子生物学的な研究により、前者の三重県の松坂地方に自生するノハナショウブから育成されたことが明らかになりました(2020)。 なお、本品種は時間ごとに花被片の形状や花色が目に見えるように変化します。 花色の場合、開花当初は藤色(青味がかった淡い紫、このホームページの上の写真6枚))ですが、開花後2日目を経過すると、淡い桃色へと変化します(同・下の4枚)。花器官の形状は、内花被片が垂れ下がり、外花被片の皺が多くなります。特に外花被片の周縁部から透明となり花色が抜けて、透き通ったようになります。このような変化は、時間ごとに観察することができます。 ホームページの写真では、下の4枚が開花後2日目の後半の萎れる前の段階です。 |
引用文献 | : |
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