しらぬい
不知火
Shiranui
伊勢系 | 【英数】三英 【花色】淡紅がかった藤色 花径は15cm(2021年6月9日) 【開花時期】6月初旬〜中旬(2014年6月14日、2016年6月15日、2021年6月9日開花) |
分類 | : | 外花被片が大きく下垂した三英花で、典型的な伊勢系の花菖蒲の品種の花容です。伊勢系の品種群には垂れ咲きの花形によって、傾斜型に垂れるもの(富士山型)、丸抱型に垂れるもの(地蔵型)、および直線的に肩を張って垂れるもの(怒肩型)、の3つに分類されます(冨野、1967の分類法による)。この冨野による垂れ方の分類にしたがえば、「富士山型」に分類されます(詳細は引用参照)。 |
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外花被 | : | 丸弁で大きく発達し、斜め傾斜状に下垂します。花被片全体が大きくうねって、波打った状態になり、周縁部が内側(花茎側)に向かって大きく巻いて、いわゆる「内巻き」の状態になることもあります。外花被片の縁部の基部(肩とも呼んでいます)の部分が大きく内側に巻いた状態になると、その部分から先端部の組織が大きく波打った状態になります。 花被片の表面には皺状の細胞が多く、外花被片同士が重なっている部分や、周縁分ではその程度が著しくなります(個体差があります)。 花色は淡い藤紫紅色(桃色に近い)で、アイの部分から若干、細い白色の筋が中心部付近まで発達しますが、目立った筋ではなく途中で消えるようです。アイの周辺部は薄い青紫色ですが、アイ周縁部の白色と混同して遠くから見ないとなかなかわかりません。直射日光が当たる場所では、薄い紅色が見えず、白色に近くなります。 |
内花被 | : | 楕円形で幅が広く、やや内巻きとなって斜め上方向に斜立します。周縁部はややフリルが入り、若干の皺が見られます。花色は淡い藤紫紅色で中心部は白色です。 |
花柱枝 | : | 斜め上に向かって直立し、先端部に向かうにつれて若干幅広くになります。 色は白色で周縁部は藤紫色です。先端部は2裂開してずい弁が形成されます。ずい弁はやや直立して先端部は花柱枝の方向に伸長し、やや内巻きとなり、細かな鋸歯が見られます。ずい弁の先端部は藤紫紅色です。 |
備考 | : | 1904年以前に伊勢地方で育成された、いわゆる「伊勢古花」であると言われています。伊勢地方で発達した伊勢系品種群は、1904年からの記録しかないので、それ以前の記録をたどることが困難ですが、冨野(1967)は紀州藩士の吉井定五郎が150年ほど前におそらく江戸から持ち帰って伊勢系品種群を育成したとする説を唱え、江戸系の垂れ咲きの品種から育成したとする説を支持し、著書にも表しています。 本学では、分子生物学的な手法によって、この課題に取り組んだ結果、伊勢古花と呼ばれる品種群の内、「落葉衣」、「瑞宝」、「村雨」、「宝玉」、「桃の里」、「狩衣」、「乙女」は、三重県の斎宮に自生するノハナショウブ由来であることを報告しました(知野ら、2020)。 このような研究には、「伊勢古花」と呼ばれる純粋な品種株と、三重県・斎宮のノハナショウブを維持・保存していることが重要ですが、この品種を含め、現在その由来を継続研究中です。 |
参考文献 | : | 冨野耕治.1967.花菖蒲.p76-77, 81.泰文館,東京. 田淵俊人.2917. 花菖蒲.柴田道夫編集.「花の品種改良の日本史」250−251 . 悠書館,東京. 知野奈苗・小林孝至・田淵俊人.2020.エステラーゼアイソザイム分析による伊勢系品種のハナショウブの起源.園芸学研究.19(別1):416. |