むらくも
叢雲
Murakumo
肥後系 | 【花容】やや平咲きで先端垂れる 【英数】六英 【花色】青紫色 【開花時期】6月上旬〜(2019年6月15・16日撮影) (小林孝至,文章・写真) |
分類 | : | 「肥後古花」のやや先端部の垂れる、平咲きの六英花です。 |
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花被片 | : | 外花被は楕円形で先端が丸い大きな弁が特徴で先端が垂れます。内花被は、楕円形で縦に長い弁が特徴で先端が垂れます。また外花被、内花被ともに根元から延びる白色の筋が明確に認められます(このように、花被片の基部(底)は深く、この部分から白色となっているので、「底白で深咲き」と呼んでいます)。花柱枝(雌蕊)を中心にして整然と花被片が大らかに伸長している「正花(せいか)」です。花被全体が薄い青紫色で、アイは底の部分から花被片に向かって大きく伸長して黄色となります。 |
花柱枝 | : | 花柱枝は白色で中央部が微かに黄色を呈します。ずい弁は2裂で上向きに立ち(いわゆる玉洞芯)、先端に細かく切れ込みがはいる「くも手」となります。また、花柱枝の周縁部は花被と同様に青紫色となります。 |
備考 | : | 草丈は57.9cmほどで、花径は17.3cmの中輪です。外花被、内花被の青紫色でアイが黄色を呈することから、花柱枝の白色が映えて目を引きます。一輪でも見応えあることから、観賞は室内で鉢植えにする方法に向いています。 この品種は、1890〜1891年(明治23年から24年)にかけて、肥後の富田又太郎氏によって育成された品種です。肥後の「満月会」の流れを組む「肥後古花」の銘花と思われますが、「御所紫→参照」と同様に、当時の種苗商社によって販売されていた品種です。「肥後古花」の花色は、基調色は白色か紫色の単色花と決まっているものが多いのですが、この時代にこのような薄い青紫色の品種もあったことをうかがわせる貴重な品種であるといえるでしょう。 |
参考文献 | : | 田淵俊人.2016.ハナショウブ(監修:柴田道夫,花野品種改良の日本史).悠書館,東京.245-249. |