うみぼたる
海蛍
Umibotaru
肥後系 | 【花容】やや平咲きで先端垂れる 【英数】六英 【花色】濃い青紫色地に白色の絞りと刷毛目ぼかしが入る 【開花時期】5月下旬〜(2018年5月28日撮影、2017年は6月3日開花) 写真撮影と文章:現在研究生・小林孝至博士、大学院修士課程2年・唐澤健太、学部4年・知野奈苗 |
分類 | : | 肥後系の平咲き六英花です。 |
---|---|---|
花被 | : | 外花被、内花被ともに花被片は円形です。濃い青紫色の地に、白色の絞りと刷毛目ぼかしが密に入ります。内花被片は天候や時間帯によっては縁部が赤紫色に見えることがあります。また、「吹きかけ絞り」(白色の筋がスプレーで吹きかけたように細かく入るさま)が細かく入ります。 肥後系は、元来紫色の単色品種で白い絞りが入る品種はありませんでしたが、戦後の混乱期を乗り越えて唯一、現存する品種です。現在、一般に見ることのできる肥後系の「絞り」品種の多くは、本品種を元にして作出されました。 |
花柱枝 | : | 芯の中心部はクリーム色で、外花被と同様の濃い青紫色の絞りと刷毛目ぼかしの覆輪が入ります。また、花被片に対して小さめの弁が特徴です。ずい弁は先端部が2裂で立たず、クリーム色の地に外花被と同様の濃い青紫色の絞りが覆輪として入ります。 |
備考 | : | 肥後系の品種としては早生で、この時期に開花するので草丈は低く、2018年は20cmほどでした(2017年は40cm程度)。花径は15〜13cmの中輪です。肥後系は鉢植え観賞向けに育成された品種群であることから、葉と花の均衡がとれ、草丈に対して大輪の変化に富んだ鮮明な花をつけることが特徴です。 本品種は昭和14年(1939年)、西田信常氏により育成されました。西田信常氏は、現在の熊本県出身で伝統と格式を重んじる「満月会」の会員でしたが、横浜に移り住み「衆芳園」を開園した人物です。肥後系品種は、紫色、あるいは 白色一色(単色)として他の色が混じることがない場合が多いのですが、本品種は、肥後系品種としては珍しい「絞り」のある品種で、このような「絞り」のある親品種の多くは現在まで残っていないようです。現在ある「絞り」のある肥後系品種は、この品種を育成親としてきた点で、本学では保存に値する品種として重宝しています。 なお、冨野(1974)によれば、本品種は昭和41年に趣味栽培家にアンケート調査を行った結果、「私が推薦したい花菖蒲22品種」に入る人気を誇っていました。 |
引用文献 | : | 富野耕治.1967.ハナショウブ.泰文館,東京.pp71-72,85 田淵俊人.2016.ハナショウブ(監修:柴田道夫,花野品種改良の日本史).悠書館,東京.248. |