あけぼの
曙
Akebono
大船(例外、江戸花容) | 【花容】やや垂れた平咲き 【英数】六英 【花色】淡藍色 淡紫色吹掛 中輪 【開花時期】5月下旬〜6月上旬(2017年) 下段は、5月31日開花(撮影:2017年度大学院修士課程修了生:山田隆裕氏) |
分類 | : | 大正時代になって神奈川県フラワーセンター大船植物園で育成された「新花」の品種で、富士雪という江戸系品種同士の交配によって、後代を得てそれらの中から選抜して命名された品種です。花容で見ると、「江戸花容」で、江戸系平咲きの六英花です。 |
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花被 | : | 花被片の形状は卵円形で、波状の皺があります。薄い紫色地に紫色の粒状のスプレーを振りかけたような細かい砂子(吹っ掛けと呼んでいます)、あるいは細かい絞りが入っています。アイは黄色で基部からまっすぐ入ります。 |
花柱枝 | : | 花容全体の割合に対して小さく、周縁部は薄紫色で中心部は白色です。ずい弁も同じように薄紫色で細かい筋が入っています。先端部は細かい鋸歯状になっています。先端部には白色の細い糸覆輪が入ります。下段の写真は、日陰で撮影したものです。肥後系の品種のように花柱枝から「飾り花」と呼ばれる細い花柱枝状の組織が分化することがあります。 |
備考 | : | 1917年(大正6年)に神奈川県立農事試験場の宮沢文吾博士によって育成されました。品種「富士雪」の実生苗の中から選抜されました。 5月下旬から開花する極早生品種です。 なお、品種育成にあたっては、その基となった品種を記録しておけば、その由来がわかるので遺伝的な形質を比較できる鑑賞的な価値があります。しかし、その基となる品種そのものが現存していないものも多いのが現状です。 科学的にどうしてこのような特徴的な花容や花色が形成されたのか、大学の研究としては深く踏み込んだ研究ができなくなるので、新品種育成に関わった品種の記録とともに、その品種の株も維持・保存して両者をセットで必ず残しておきたいものです。本学では、品種育成に関わったと考えられる品種も、維持・保存の対象にしています。本品種の育成の基と言われる「富士雪」については、残っていないようです。なお、本品種は蜻蛉と非常に良く似ています(→蜻蛉(せいれい)を参照)。 |
参考文献 | : |
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