TOP > 研究テーマ02「花菖蒲」 > 02-2. 文化財としての価値 - 「古い品種群」を保存する意味はあるか?
江戸時代に育成された「古い品種群」を保存する意味はあるのですか?
新しい品種が育成されると、これまでにあった品種はすたれていくのが常のようですが、花菖蒲だけはその点で大きく異なっています。「故き(ふるき)を温ね(たずね)、新しきを知る」の故事がまさにぴったりの植物ではないでしょうか?
何でもせわしいスピードがすべての世の中ですが、行く川の流れに身を任せてのんびり、しかし、「しっかりとした目標をもって研究をしていくこと」も大学では極めて重要だと考えています。では、なぜ、古い品種を残す意味があるのか、考えて見ましょう。
- 1.江戸時代に育成された品種は、世界に誇ることのできる日本文化の象徴、すなわち、文化財的な価値を持つからです。
その品種群が大地震や戦火に見舞われた痛々しい時代を乗り越え、200年の時を経過した今でさえなお、当時の面影そのままに開花する、なんと素晴らしいことではないでしょうか?
- 2.当時の江戸は、世界でもっとも園芸が盛んであったといわれています。キク、アサガオ、サクラソウ、ナデシコ、フクジュソウ…。さらに盆栽。皆が競って園芸を楽しみ、園芸(花、植物)を通して人間関係を形成したおおらかな時代であったのです。
したがって、品種改良にも「当時の人々の思い」がしっかりと詰まっています。花色、花形、姿から品種名まで、すべてにこだわりがある=ゆえに良い品種である=残したくなるような品種であるのです。これらの品種の素晴らしさを学ぶことは、園芸や育種の基本になります。現在のように科学が発達した時代であっても、当時のような品種を超える品種ができるでしょうか?おそらくできないと思います。研ぎ澄まされた感性は良いお手本になることでしょう。
- 3.日本は国際化がまだまだ遅れている、といわれます。それにはまず言語が大切かもしれません。しかし海外から学ぶだけでなく、日本から発信していくことも国際化の一つではないでしょうか?花菖蒲は日本を語るための素晴らしい素材になっていること、間違いないと思います。
実際に、柔道、相撲、アニメーションなどは日本の文化として世界が認めることろです。
したがって、花菖蒲は文化財としての価値、遺伝資源としての価値を兼ね備えているので、古い品種は、何が何でも後世に末永く残していかなければならない、日本人としての義務があると考えていますが、皆さんはいかがお考えでしょうか?
大学で素晴らしい花菖蒲を使って何かを感じることは、非常に大切な「得がたい」ものを得るに十分なのではないでしょうか?本学で栽培している花菖蒲にぜひ、触れてみてください。見てください。きっと植物は私たちに何かを語ることでしょう。それに気づく能力を身に着ける、植物機能を理解することにつながるのではないでしょうか。
02-2.江戸時代に栄えた「花菖蒲」の文化財としての価値 目次
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