TOP > 研究テーマ02「花菖蒲」 > 02-2. 文化財としての価値 - 卒業研究の紹介・学生の声
一番左が私、中村泰基です!田淵教授(中)、平松渚大学院生(右)と共に!
大学に入学する以前からアヤメ科のハナショウブに興味があり、その遺伝資源としての重要性について学びたいと思いました。大学生になる前、自宅で栽培していたハナショウブの種をまいたところ、親と違った色や形の花が咲いたことに驚き、なぜこのようにバリエーション豊かな花が作り出せるのか興味を惹かれました。野生のノハナショウブから数えきれないほどの多様な園芸品種が作り出されてきましたが、本学では元々青い花を咲かせるノハナショウブを交配に利用し、より「青い」色のハナショウブを作り出そうと試みており、新しい品種を誕生させる楽しさがあります。
今、地球温暖化によってノハナショウブの自生地である湿原が少なくなっていて、いくら新しい品種を作り出そうとしても、ノハナショウブが絶滅してしまってはそうもいかなくなります。新たな品種を作り出すとともに、自生地の保護の方法も模索していて、非常に幅広い研究ができるところが魅力です。
私はハナショウブの根の機能について研究しています。ハナショウブは日本を代表とする花で、長い栽培の歴史をもった花です。ハナショウブの中には海岸線に自生するものがあり、塩に強い性質を有していることが考えられます。しかし、このような性質は証明されていないので、私は今この性質を証明しようと研究しています。そして、その性質を利用して、多く肥料を与えることで起こってしまう塩害などに強いハナショウブを育種することができればよいと思います。ハナショウブを卒論テーマにして良かったことは、植物を栽培することや現地調査、実験といった研究がバランスよくできることです。一度に三つ美味しい研究ができて、日々充実した毎日を楽しく過ごしています。
修士論文では、デンジソウの生態調査と、栽培方法およびアクアリウムへの利用の検討を行っています。デンジソウは「田字草」と書き、一見、名の現す通り、「田」の字の形や四葉のクローバーに似ていますが、アジアンタムなどと同じシダの仲間です。かつては日本中の水田に見られた水草ですが、今では絶滅危惧種に指定されています。温室では、デンジソウと共に国産のメダカを飼育する他、野外から侵入したヤゴやオタマジャクシなどが生育しています。実験の最終的な目標は、メダカとデンジソウの生きる生態系を再現することですが、こうした侵入した生物によって形成されつつある独自の生態系の観察も面白いです。
私は、現在ノハナショウブという植物について研究を行っています。この植物は日本の伝統的な園芸植物「花菖蒲」の元となった植物で、花の形や色など様々な変異が存在するとても興味深い植物です。しかし、これまでにこの植物への関心はほとんど無く研究も行われていなかったため、謎の多い植物でもあります。
種子から成長しその一生を終えるまでの生活環、赤紫、ピンク、青紫、白などの様々な花色がでるメカニズム、種子発芽や栽培における最適条件など研究課題は山積みであり、植物を観察しているだけでも新しい発見があり、とても研究のやりがいがある植物だと思います。また、ノハナショウブは日本の湿地に自生していますが、近年の宅地開発や地球温暖化などの影響で自生地は非常に少なく、絶滅の危機に瀕しています。ノハナショウブは学術的な研究だけでなく、地球環境の保護や生物多様性といった観点からも研究できて非常に価値のある植物です。私は、大学の3年でノハナショウブを知ったばかりですが、謎の多いこの植物に興味が尽きず、4年の卒業研究に引き続いて大学院に進学し研究を行っています。また、私の研究を通して、古くから存在していながらあまり知られていない、ノハナショウブ・花菖蒲に少しでも興味を持ってもらえればと思っています。
ハナショウブに特徴的な花弁の付け根の黄色い部分の拡大写真。黄色の部分は昆虫を寄せるための「eye」といわれています。右の粒は花粉です。
(左)栽培した品種を農学部事務室前に展示
(中)青色をした野生のノハナショウブを発見
(右)栽培品種に導入→育成中の「青い」花菖蒲
(右)本学の調査でノハナショウブから発見した白・ピンク色の新品種「北野麗人」です。本年度、国立科学博物館で開催されている「花展」でも公開されました!
(左)栽培品種を改良するのに必要な野生のノハナショウブ(変異を見つけ栽培品種に導入します)