フランスでは「愛のリンゴ」、イタリアでは「黄金のリンゴ」というニックネームの持ち主、今や世界でもっとも生産量の多い野菜、これがトマトです。でも、食物としての「市民権」を得たのは新大陸発見後のことで、ヨーロッパに伝えられた後にあっという間に世界中に普及していきました。かつてメキシコに栄えたアステカ文明のもとで、「トマティル」と呼ばれていたのが、その語源とされています。わが国には江戸時代に「唐柿」「唐なすび」の名で渡来した記録がありますが、当時はもっぱら観賞用として利用され、一般に食べられるようになったのは昭和に入ってからです。こんなにわずかの間に、一気に食卓を彩る主役に躍り出たトマト、その秘密を探ってみましょう。