日時 | 2006年3月5日(日) |
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司会 | 中山剛史 (玉川大学文学部/脳科学研究施設・生命観部門) |
クオリアとアフォーダンスが関連づけて論じられることはほとんどありません。それは、クオリアが純粋な感じであり、動きと本質的な結びつきをもつものではなく、またアフォーダンスが無意識的なレベルで行われる動きの可能性と見なされているからでしょう。しかし、こう感じるからそう動き、こう動くからそう感じるというような、クオリアとアフォーダンスの本質的な結合というものは、成立しえないのでしょうか。ここでは、高難度の技のうちにそのような結合の可能性を探ってみることを試みました。
ある分野ないし領域が科学として成立するのは、どのようにしてでしょうか。科学の「発展段階」について科学史ではさまざまなことが言われてきました。ある対象についての経験的知識が累積している段階は、初期科学ないし博物学あるいは記載分類学の段階ですが。それに対してある時期に最初の「科学革命」によって、そこからの「離陸」が起こるのが、狭い意味での科学の成立とされています。ニュートンの力学、ラヴォアジェの化学、ベルナールの生理学などが古典的な事例です。このような科学革命をなり立たせるメルクマールは何なのでしょうか。そこには、理論、実験技術、固有の対象領域の設定などさまざまな要素があります。基礎科学と医学工学などとの違って、環境科学などの課題先行型などがあるなかで、現在の「脳科学」はいかなる意味で科学なのかという問題提起をし、また近年の脳科学が、人間観などにどのような新たな見通しを与えているかの思想的意味を検討しました。