日時 | 2006年9月8日(金) |
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発案者 | 千住淳(九州大学) / 大森隆司(玉川大学) |
他者の視線方向の知覚は、対人コミュニケーションの発達において重要な役割を果たしている。これまでの実験心理学的、認知神経科学的検討により、生後まもない新生児において既に、アイコンタクトに対する選好や他者の視線方向の追従が見られることが明らかになっている。演者は、乳児が視線の「意味」あるいは「機能」をどのように認知しているかについて検討し、生後9ヶ月の乳児が視線の参照的な意味、あるいは他者が「何かを見ている」状態を弁別し、参照的な視線に対する選好を見せることを明らかにした。このような参照的視線に対する選好は、共同注意の成立や社会的学習などに重要な機能を果たしていると考えられる。また、本セミナーでは事象関連電位法によって記録された参照的視線の認知に関連する脳活動についても報告し、その神経科学的な基盤についても議論する。
意図理解という心の複雑な機能もまた脳という装置の行っている情報処理であり、計算として理解できるはずだと思います。
情報処理の立場からは他者理解とは、自分以外の行動決定主体の行動決定に関わるが、直接には観測できない内部状態を、その対象に関する知識をもとに推定する、という計算過程と表現できよう。ヒトはそのような推定を日常的に、動物、他者といった事象に対して行なっており、それが我々の他者理解や円滑な協調行動の基盤となっているであろうことは想像に難くない。
この講演では、簡単な協調ゲームのシミュレーションを題材に、そのような他者の状態推定とそれに応じた行動決定過程の計算モデルを紹介し、さらにはその上位にあって円滑なインタラクションを実現するべく自己の行動決定方略を制御するメタ行動決定システムについて考察する。