花、野菜、果樹などの園芸植物を使った園芸学全般を扱っています。主な研究内容は以下の通りです(順番は関係ありません)。他にも多くのテーマがありますが、詳細は研究課題を参照するか、直接問い合わせ下さい。
1.わが国の伝統的な園芸植物、花菖蒲の文化財、遺伝資源としての維持・保存日本を知ることで世界を知るー「文化財的な園芸植物の観賞と保護」
花菖蒲はアヤメ科の植物で、江戸時代にわが国で作られた伝統的な園芸植物です。これらは芸術性に富み、非常に観賞価値の高いものです。わが国が世界に誇る文化財ともいえるでしょう。現在、研究室の圃場には江戸時代に育成された品種の多くが、管轄当局の特別な許可の元で許されて保存され、開花期には美しい花を咲かせます。例えば、明治神宮や大船植物園の門外不出の品種も一同に揃っています。これらの品種の特徴を科学的に調べることによって、江戸時代から現代まで、花はどうして美しいと思われるのかを調べています。さらに、時代を超えた人々の美的感覚を追及し、併せて花の美しさとは何か?美的感覚はどういう面から生まれるのか?などを研究しています。貴重な文化財としての花を今後、どうやって守っていくかについて文学的、科学な研究を通して幅広い研究を展開しています。江戸時代に描かれている浮世絵や文献を使うこともあります。
2.花菖蒲成立の原種となった、野生のノハナショウブの維持・保存と遺伝資源としての有用性を見つけるー日本の風景を知る「園芸植物の成立と遺伝資源、品種改良」
花菖蒲は、日本各地に元々自生していたノハナショウブから作られたものです。しかし、地球温暖化によってそのほとんどが絶滅し、今やごく限られた地域にしか自生していません。そこで、全国のノハナショウブを管轄当局の許可のもとに採集して研究室の研究圃場で維持・保存してその特徴を調べています。今後、江戸時代に育成された花菖蒲が成立した要因をDNAレベルで調べたり(筑波大学、明治大学と共同研究)、品種改良をする上で貴重な遺伝資源としての素材の研究をしていく予定です。東日本大震災の津波を被ったにも関わらず生き残ったノハナショウブについては、「復興のシンボル」として研究を続けています(弘前大学との共同研究)。また、ノハナショウブは稲作文化とも深い関係がありますので、自生地調査を通して農村文化との関わりについても研究を続けています。
3.野生種トマトの維持・保護と、機能性の調査―世界的な園芸植物の遺伝資源の保護「園芸植物の成立と遺伝資源、機能性」
世界でもっとも食べられている野菜のトマト。野生種トマトにはそれらの品種改良に欠かせない貴重な性質がたくさん詰まっています。近年の地球規模の温暖化などによってこれらの多くは絶滅の危機にさらされています。現在、研究室の温室には、南米・アンデス山地やガラパゴス諸島に自生する野生種トマトをアメリカ・カリフォルニア大学との共同研究としてほぼ全種保有し、その機能性(どのような役に立つ性質があるか)を調べています。これまでに、塩類や害虫に強いトマト、栄養価の高い成分を持つトマトを発見しています。
4.トマトで世界を知るー栽培トマトの味比べ「栽培トマトの成立と食文化」
トマトは、コロンブスが新大陸を発見してからわずか500年もの間に世界中で栽培されるようになった、比較的新しい野菜です。その理由は何か?トマトを栽培して、その成分や味を比較調査し、世界中にトマトが広まっていった原因の一端を調べています。世界中のトマトの品種を知ることはその国の文化を知ることにも繋がります。例えば、最近ではイタリア料理ブームにより加工用トマトが人気になりつつあります。また、わが国ではより甘い、ピンク色のトマトを食べています。いつから、トマトを食べる習慣ができたのか?お国柄や、生活習慣の変化は、その国で栽培しているトマトの品種の変遷を調べることでわかるといっても過言ではありません。
5.香りを知るー香り成分をビジュアル化する「香りと心の癒し」
研究室の温室には、多くの花鉢物があります。室内園芸植物として用いられ、香りが良く、化粧品やアロマセラピーにも用いられるゼラニウムの一種、センテッド・ゼラニウムは栽培品種、野生種を含めて多くのコレクションがあり、貴重な遺伝資源となっています。これらの葉から発散されるカンキツ系の香りの元である、シトラールなどの香り成分を組織化学的に顕微鏡下で調べ、写真にして葉のどの部分から成分が分泌されるのかを研究しています。
6.室内環境を浄化―室内環境汚染物質を園芸植物を使って除去する「環境浄化」
現代の生活様式は以前に比べると大きく様変わりし、1日の多くを室内で過ごすようになっています。室内には有害な揮発性有機化合物、ホルムアルデヒドが存在し、その量が多いと頭痛、吐き気、めまいなどの「シックハウス症候群」の原因になります。この有害な物質を、各種の園芸植物を使って除去し、無毒化する仕組みを調べています。現在までに、香りゼラニウムやベゴニア、サンパチエンスなどでその除去効果が認められています。葉の内部構造のどの部分で無毒化されるのかについても顕微鏡を使って調べています。
7.花をいつまでもきれいに咲かせるには?―花の秘めた仕組みに触れる「花の鮮度保持」
花は観賞するために用いられますが、生物学的には老化現象によって萎れたり、脱離します。そこで、いかにして花もちを良くするといいのか、その原因となるエチレンの生成量、花弁の細胞構造の変化、花が取れる時にできる離層細胞の構造について調べています。また、花をいつまでも咲かせるための方法についても研究をしています。
8.都市に出現したハヤブサ、チョウゲンボウ「個人的な研究ですので領域としては行っておりません」
本学には、ハヤブサの仲間、チョウゲンボウが25年間に渡って棲みつき、毎年繁殖しています。このような現象は極めて珍しい例です。他にも多くの野鳥が生息し、野鳥の宝庫になっています。どうして、都会にチョウゲンボウが生息するようになったのか、独自に調査をしています。野鳥はその地域の環境を知る上で、非常に多くのことを私たちに教えてくれているのです。
▲TOP