水郷佐原あやめパークの名物の1つ、
園内の水路を「サッパ舟」と呼ばれる小舟に乗って花菖蒲を観賞できる
千葉県・香取市の「水郷佐原あやめパーク」の方々のお招きにより、現地での花菖蒲の栽培について視察を行いました。この地域は利根川の河口にあたり、江戸時代からの穀倉地帯であり、水路として栄えた街です。佐原の大祭、測量を行った伊能忠敬のゆかりの街として有名ですが、江戸時代に育成された花菖蒲400品種150万株が一斉に開花します。江戸時代にタイプスリップしたような感覚になります。園長様やスタッフの方々との交流を通して、毎年、今以上に立派な花菖蒲を咲かせる方法などを話し合いました。
写真下左:咲き終わった花摘み、畦(あぜ)の除草はまる1日がかりの大変な作業です。暑い中、敬意を表します。
写真下右:船頭をしているのは、「ミスあやめ」の小林真弓さん。本学・農学部・植物機能開発科学領域(私と同じ部屋)の卒業生です。船頭は命を預かる大変な仕事ですが、お客様をしばし江戸時代に戻った気分にさせることも仕事の1つです。船頭をしながら、私の「園芸学」や「植物生理学」の講義以上の、大変素晴らしい花菖蒲の解説をしており脱帽いたしました。卒業生の活躍を見るのは本当にうれしいものです。
水郷佐原あやめパークでの視察(2017年6月)
本学では、2006年に神奈川県立フラワーセンター大船植物園、2008年には明治神宮の林苑において花菖蒲園の土壌や水質を調査し、花菖蒲の栽培に適した立地条件について比較研究をしてきました。この度、全国的に有名な花菖蒲の郷、「水郷佐原あやめパーク」を訪れる機会に恵まれました。土壌条件や水質は、データを見る限り、花菖蒲の生育に申し分のない条件でした。立地条件は全国有数の水田地帯にあるため、昼間は強い太陽光が降り注ぎます。その一方で、昼間には寒流の影響か適宜涼しい風は吹きます。夜間はやや冷えるので、この気温の寒暖の日較差が花質を良好にし、茎葉のしっかりとした花菖蒲を作り出しているように感じました。今後、根の張り方などを共同で調べることによって、「水郷佐原あやめパーク」の花菖蒲が末永く維持・管理されていく研究ができるようになることを期待しております。また、それ以上に地域の風土を愛してやまない園長様はじめ管理の方々、卒業生の温かい心に敬意を表したいと思います。今後とも、花菖蒲を通して末永く応援したいと思っております。
→今後は、以下に掲載した論文を応用して共同研究を行うことになるでしょう。