1. ファイルの作成
まず、シミュレーションの内容を記述するためのhocファイルを作業用フォルダに作成する。(hocファイルについてはシミュレーションの方法を参照)
2. createコマンド
1で作成したファイルをテキストエディタで開き、細胞モデルを作成していく。細胞モデルを作成するためには、セクション(=コンパートメント)を作成する必要がある。そして、セクションを作成するために”createコマンド”を利用する。ファイルには以下のように入力する。
createコマンドは”create セクションA, セクションB,・・・”とすることで、「セクションA, セクションBという名前のセクションを作成する」という命令文になる。それぞれのセクションの名称は、以下の通りである。
図1
3. セクションの形状
それぞれのセクションは、長さと太さを自由に決めることができる。この時、長さをL、太さdiamと置き、入力していく。
図2のような形状を作成するには、図3のように書く。
※図3の"dend"はセクションの名前を示している。
図2
図3
4. 空間的計算の精度
各セクションは、長さや太さを自由に設定することができる。そのためNEURONではセクションの長さに応じて空間的計算の精度を自分で設定する必要がある。空間的計算の精度とは、セクションを何分割してシミュレーションを行うのかという設定である。例えば、長いセクションを2分割してシミュレーションを行った場合、膜電位の空間的計算の精度は非常に悪いため、正しい結果を得ることはできない。そのため、セクションの長さに応じて空間的計算の精度を良くしてシミュレーションを行う必要がある。
空間的計算の精度を設定するには、nseg=値というコマンドを使用し、diamコマンドの後に入力する。
例, 図3で作成したセクションの空間的計算の精度を1に設定する場合(図4)
図4
■各セクションの結合
【 結合のルール 】
1. 結合先に指定出来るのは1箇所のみ
図5のように、「セクションBがセクションAに結合した」という情報と、「セクションBがセクションAに結合した」という情報は同時に持つことができない。
図5
そのため、図6のように、「セクションBがセクションAに、セクションCがセクションBに結合する」とするか、「セクションAとセクションCがそれぞれセク ションBに結合する」とすることで細胞モデルを作る。
図6
1. セクションの端以外にも結合出来る
図7のように「セクションAの先端をセクションBの0.3の位置に結合させる」ことは可能である。しかし「セクションBの0.3の位置をセクションAの先端に結合させる」ということはできない。
図7
【セクションの結合】
“connectコマンド”は、”connect セクションB(位置[ 0 or 1 ]), セクションA(位置[ 0 ~ 1 ])”とすることで「セクションBの先端(または末端)をセクションAのある位置に結合させる」というコマンドである。
connectコマンドは、createコマンドの後に入力する。
例, somaセクションの先端(0)をaxonセクションの末端(1)に結合させる場合(図8)
図8
■膜の性質の導入
・ 受動的性質
神経細胞の膜には、膜電位を一定に保つためにさまざまな種類のイオンチャネルが埋め込まれている。これらのイオンチャネルの働きによって、細胞膜が静止膜電位を生じる性質を、膜の受動的性質という。
・ 能動的性質
受動的性質は膜電位を一定に保つ働きしかないため、活動電位を発 生させる能力はない。そのため、膜にはある膜電位になったら開くイオンチャネルが用意されている。 このように膜電位の変化によって膜の性質が変化することを、膜の能動的性質という。
シミュレーションを行う際、これら2つの性質を入力しなければならない。以下は、2つの膜の性質コマンドと、各セクションの関係をまとめたものである。
図9
insertコマンドは、"insert ○○"とすることで「セクションに○○という性質を導入する」という命令文である。"pas"(passiveの略)が受動的性質、"hh"(Hodgkin-Huxleyの略)が能動的性質を表している。また、"e_pas=数値"を入力すると受動的性質のパラメータを変更することが可能である。
膜の性質コマンドは、nsegコマンドの後に入力する。
例1. 樹状突起
図10
例2. 細胞体
図11
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