館蔵資料の紹介 2024年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2024年 > イエス・キリストの洗礼
板 テンペラ 縦41.4×横27.4cm
ギリシア 18世紀
イエス・キリストがヨルダン川で洗礼者ヨハネから洗礼を受ける場面を描いたイコン。イエスは白い腰布のみを着けて川のなかに立ち、その頭にヨハネが右手をさしのべて洗礼を施している。ヨハネが立つ岸の対岸では、天使たちが衣をもって水からあがるイエスを待ち受けている。イエスの頭上には、天からの光がふりそそぎ、聖霊の象徴である鳩が羽ばたいている。
新約聖書の福音書によれば、洗礼を受けたイエスが水からあがると、天が開いて鳩のような神の霊が舞いおり、天から「これは私の愛する子、私の心に適(かな)う者」という声が聞こえてきたという。このイコンには、洗礼によって父なる神の声を聞いたイエスが、神の子であることを自覚する劇的な瞬間と、父なる神、神の子イエス、聖霊の三者が一体となる三位一体の奇蹟があらわされている。
素朴な表現のなかに神聖な趣を漂わせるこのイコンは、神の原像を映し出す鏡として、人々の崇敬をあつめたものであったのだろう。