館蔵資料の紹介 2024年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2024年 > 東京名所之内 上野山内一覧之図
河鍋洞郁(暁斎) 画 木版多色摺 大判三枚続
縦37.5×横73.2cm 1881(明治14)年
第2回内国勧業博覧会開催時の上野公園を俯瞰的に描いた錦絵。作者の河鍋暁斎(かわなべきようさい)は、浮世絵師の歌川国芳に師事したのち、狩野派の前村洞和(まえむらとうわ)らに学び、「画鬼」とも称された異色の絵師である。
満開の桜に彩られた上野の山に博覧会の陳列館が建ちならび、左上部には国立科学博物館の前身にあたる教育博物館の建物(1877年竣工)もみえる。中央上部の煉瓦造2階建の建物は、イギリス人建築家ジョサイア・コンドルの設計によるもので、博覧会の美術館として使用されたのち、関東大震災で倒壊するまで東京帝室博物館(現・東京国立博物館)の本館として使用された。1877(明治10)年に来日して日本の近代建築に多大な功績をのこしたコンドルは、暁斎に弟子入りして日本画を学び、師の作品を海外に紹介する役割も果たした。
本図には、戊辰(ぼしん)戦争の兵火で焼失した寛永寺の境内地にあたる上野公園が、博覧会の開催をとおして、博物館が集まる文化ゾーンとして整備されていく過程を垣間みることができる。