館蔵資料の紹介 2023年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2023年 > 幼童家庭教育用絵図 比耳印花草機(ピール印花草機)
文部省製本所 木版色刷
縦36.2×横24.0㎝ 1873(明治6)年頃
明治初期の日本では欧米諸国の教科書や教訓書の翻訳を用いた学校教育が行われていた。「天は自ら助くる者を助く」という一文が有名なサミュエル・スマイルズ(1812−1904)の『西国立志編』などは、その典型である。
1873(明治6)年になると、文部省は学校教育だけでなく家庭教育の重要性も意識し、幼童家庭教育用絵図を制作した。その内容は家の造作、農林、養蚕、教訓、道徳、西洋偉人伝、数理、力学、組み立て絵、着せ替え絵など多様であるが、今回は西洋偉人伝の一つである比耳印花草機(ピール印花草機)を紹介する。
『西国立志編』のなかには、ロバート・ピール(1723−1795)が綿布印刷機を発明する話が掲載されている。その記述によると、ピールはシロメ(スズを主成分とした合金)の皿に模様を描きながら、その模様を逆さにすれば印刷ができるのではないかと着想し、色模様の印刷機を発明したそうである。本絵図は、その様子を描いたものであろう。
西洋を範として近代化に努めた明治の人々の気迫が伝わる作品である。