館蔵資料の紹介 2023年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2023年 > 手稿譜「すみだ三章」
なかにし礼 作詞 石丸 寛 作曲
紙、ペン 縦38.6×横28.8cm 1990(平成2)年
長年にわたり玉川の第九を指揮した石丸寛(ひろし)(1922−1998)が作曲した交響合唱組曲『すみだ三章』は、「音楽都市すみだ」のイメージを広く喧伝するために墨田区から委嘱された作品である。1991年5月13日、上野・東京文化会館で、新日本フィルハーモニー交響楽団、日本プロ合唱団連合、墨田区合唱連盟と石丸自身の指揮で初演された。華々しい場にふさわしく、混成四部合唱に管弦楽の大規模な編成で、墨田の歴史と下町風情をテーマとしている。
第1章「奇跡」では悠久の時間を流れる隅田川をたたえ、第2章「悲歌」では東京大空襲で赤く染まった隅田川と平和への灯を祈り、第3章「復活」では困難の中でも将来への希望を見出しながら墨田に暮らす人々を、花火に託して歌い上げる。
「詩は、ことばで出来ているけれども、詩として完結したとき、ことばは姿を消す。詩が文学であればあるほど、音楽との接点を起想することが難しくなる。これは文学と美術、美術と音楽などの関係でも同じことだろう」と石丸はいう。絵筆をとる彼だからこその表現だ。