館蔵資料の紹介 2022年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2022年 > 彩文台付壷
タイ バン・チェン遺跡周辺出土か
前300年~後1世紀頃 口径9.5×器高19.1cm
戸田哲也氏寄贈
北東タイの北部、ウドンタニ県に、バン・チェン遺跡という、集落と墓地の遺跡がある。1960年代にこの遺跡の存在が知られると、出土する赤い顔料で文様を描く特徴的な土器の存在が、注目されるようになった。
やや扁平な壷の下部に、高い脚台が付く本資料も、バン・チェン遺跡か、その周辺出土のものとみられる。成形後にクリーム色の化粧土をかけ、さらに赤色顔料で装飾する。口縁(こうえん)と肩の部分を赤く塗り、頸部(けいぶ)と胴の屈曲部に1条の横線を巡らせ、肩に白抜きでタカラガイ状の文様を表現する。胴下部には、花弁を思わせる連続アーチと列点文がみられる。脚台の下半には、横方向の列点文と5本の平行線、裾には3連の波文様が巡るように描かれる。
バン・チェン遺跡出土の土器は、時期的に何段階かに分けられ、青銅器出現期の土器は、当初紀元前3600年頃とみられ、世界最古の青銅器文化かと騒がれた。その後も年代観の検討が続き、現在、青銅器出現は紀元前1500年以降、赤い顔料で文様を描く土器は、鉄器を伴い、紀元前300年~後1世紀頃のものと考えられている。