館蔵資料の紹介 2021年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2021年 > 雄辨大家 敎育新演説
村上千秋(編纂) 黒沢 勇(編輯) 明昇堂(発行)
1892(明治25)年 縦18.5×横12.6㎝
『雄辨大家 敎育新演説』は明治期の知識人の教育に関する演説の収録である。東京工業学校長を務めた手島精一(1849-1918)や、体操伝習所主幹であった伊澤修二(1851-1917)の演説も含まれるが、今回は「女子の体育」の演説を紹介したい。演説は、欧米諸国の女子に比べ日本の女子が貧弱にみえると嘆き、食生活の改善や運動などにより体力や気力の向上を促している。そして、女子の運動として体操よりも、テニス、鬼ごっこなどの遊戯や舞踊、水泳などに取りくむように薦めている。
明治初期より、日本では欧米諸国の体操を学校教育活動に取り入れてきたが、主たる対象は男子で、女子の体育教育は積極的とは言い難い状況にあった。しかしながら、明治20年代頃になると、女子体育への関心も高まり、教科書や手引書なども発行された。
ちなみに、この演説を行った人物は東京帝国大学理科大学長を務め、理化学研究所創設に関わった櫻井錠二(1858-1939)と推定される。ただし、1892年発行の本書では「法科大学教授」と紹介されている。