館蔵資料の紹介 2021年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2021年 > 深鉢(ふかばち)(炉体(ろたい)土器)
縄文時代中期(井戸尻式最終末段階) 東京都町田市
本部台遺跡8号住居址出土
現存高27.4×口径29.7cm
玉川学園構内に所在する本部台(ほんぶだい)遺跡の第3次発掘調査(2017年)で、出土した土器である。写真の残存部位より下、胴下部を故意に打ち欠き、竪穴住居址(じゆうきよし)の床に埋め込み、火をたく炉に転用されていた。この炉址(ろし)内出土の炭化物の放射性炭素年代測定では、較正(こうせい)年代で紀元前2993±90年との結果が得られた。
褶曲文(しゆうきよくもん)という特徴的な文様をもつ土器は、山梨県を中心に稀に出土し、本資料は口縁部に粘土紐を上下から交互に、波打つように貼り付ける。下方の線には12カ所の頂部があり、そこに点丸あるいは渦巻き文様が付く。
各頂部は、予め土器の全周を均等に分割し、計画的に配置したものではなく、ある頂部からフリーハンドで施文(せもん)していったと推定される。そのためほぼ1周すると、中途半端な隙間が生じてしまい、そこに井桁(いげた)状の異なる文様をはめ込み、空間処理をしている。土器本体は非常に丁寧に仕上げられており、縄文人の土器作りの緻密さとアバウトさが、同時に観察される資料と言えよう。