館蔵資料の紹介 2021年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2021年 > メンデルスゾーン作曲『ゲーテの詩に基づくバラード《最初のワルプルギスの夜》Op.60; MWV D3』自筆ピアノ譜
紙、インク、鉛筆 縦34.4×横24.0㎝ 48ページ 1843年
メンデルスゾーンの代表作のひとつとされる『ゲーテの詩に基づくバラード《最初のワルプルギスの夜》Op.60; MWV D3』は、彼が13年の歳月をかけて取り組んだ大作であり、独唱と合唱、管弦楽からなるカンタータである。この時代の楽譜出版においては、管弦楽曲のような大きな編成の楽曲はピアノ譜に編曲してスコアとともに発表するのが通例だった。これに倣い、本作品もメンデルスゾーン自身の手によって管弦楽部分がピアノ用に編曲されたものが発表された。
自筆譜のもっとも一般的な活用方法は、すでに出版された同作品と内容を比較し、作曲の過程を調査研究することである。管弦楽の譜面とこの自筆ピアノ編曲譜を比較すると、加筆や抹消など内容変更の痕跡が多く見られ、作曲者が典型的な推敲型であることがわかる。
またピアノ編曲譜独自の表現方法として、リズムの変更や演奏しやすさなども考慮されており、必ずしも管弦楽版の譜面の動きをそのまま反映させていないことが窺える。