館蔵資料の紹介 2020年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2020年 > 燃えざるイバラの中の聖母
ロシアイコン 板にテンペラ、金箔
縦21.9×横19.0㎝ 18世紀 丸山 健氏寄贈資料
「燃えざるイバラ」とは、『旧約聖書』出エジプト記第3章に記された、神の山ホレブ(シナイ山)でモーセが見た「炎の中にイバラがあったが、イバラは燃えていなかった」という場面のことである。燃えざるイバラの中に神が現われたことで、正教会ではこの炎をマリヤがイエスを身ごもる予兆と解釈している。
画面は、バラの花と星の形で大きく分割されている。バラは聖母マリヤを象徴する「神秘のバラ」、星は聖母マリヤの名に由来する「星のマリヤ」の象徴である。星は四方に光芒を放つ2つの重なりで構成され、下の赤く縁どられた星は「燃える炎」、上の藍色の星は「燃えざるイバラ」を暗示している。
中央には、聖母マリヤが左腕に幼子イエスを抱く、「ホディギトリア型」の聖母子が描かれている。マリヤが右手に持つ白い梯子は、創世記に記された地上から天に向けて立てられた梯子(ヤコブの梯子)で、イエスによる天と地の交わりを示す。星の周囲には天使たちが配され、枠の部分には大天使や聖人たちが描かれている。