館蔵資料の紹介 2020年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2020年 > 儒者競(じゆしやくらべ)
作者不詳 和紙 木版墨摺
縦40.1×横32.5㎝ 19世紀初頭頃
江戸時代後期から明治時代中期にかけて、大都市では相撲の番付になぞらえ、人気や実力を表す一枚摺りのランキング表が多く作られた。これを見立番付(みたてばんづけ)という。対象は庶民の興味を反映し、役者、武将、書画家、諸国物産、行楽地、繁栄地、料理屋、豪商、資産家など実に多様であるが、本資料のように儒者(学者)の番付も作られた。
東西各50名が名を連ね、他に林羅山(はやしらざん)(1583−1657)ら別格の大学者15名は、行司などにあてられている。最高位の東西の大関は、伊藤仁斎(いとうじんさい)(1627−1705)と山崎闇斎(やまざきあんさい)(1619−1682)である。以下特に上位には、16世紀末以降の著名な儒者が並ぶ。順位は、庶民の学者に対する率直な評判・評価の表れとみて良い。
作者や製作年の記載はないが、儒者たちの活躍期、生没年から、19世紀初頭頃の製作と推定される。約200年にわたる全国各地の儒学者100名以上の業績を評価できる者がおり、その結果を番付で人々も共有するという、江戸時代の庶民の、学問や学者に対する関心の高さを物語る資料である。