館蔵資料の紹介 2020年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2020年 > 受胎告知
ロシアイコン 板に油彩、金箔 19世紀後半
縦57.5×横50.0㎝ 時津寿芳氏寄贈資料
未婚のマリヤのもとに大天使ガブリエルが現われ、「あなたはみごもって男の子を産むでしょう。その子をイエスと名づけなさい」と言った受胎告知は、《ルカ福音書》に書かれたエピソードである。そこに受胎告知の具体的な場所は示されていないが、東方のキリスト教美術であるイコンには、受胎告知の時にマリヤが神殿を飾る垂幕を織るための糸を紡いでいる場面が受け継がれてきた。
一方西欧の美術では、糸を紡ぐマリヤ像は少なく、マリヤは書物を持つか、書見台や机に置いた書物とともに描かれるようになった。また、場所も教会や修道院などが建築モティーフとして選ばれる傾向が顕著である。
このイコンには、聖母の純潔の象徴である白ユリを持った大天使ガブリエルと書見台上の開かれた書物を前に両手を胸に組むマリヤの姿が描かれている。19世紀になるとロシアイコンの中には、本作のように伝統的なイコンの様式から離れ、西欧絵画の影響が色濃く表れた表現も多くみられる。