館蔵資料の紹介 2019年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2019年 > 『幼年の友』 臨時増刊 五月五日お節句號
第七巻第六號 實業之日本社(發行)
縦22.0×横15.3㎝ 1915(大正4)年
今回、紹介する資料は1915(大正4)年発行の幼児向け雑誌『幼年の友 臨時増刊 五月五日お節句號』である。表紙には鯉のぼりの中に、兄弟を連想させる3人の男児が可愛らしく描かれている。上段の大きな真鯉の少年は学帽を被り、双眼鏡を手に好奇心に満ちた表情だ。中段の緋鯉の男児は、自分の弟なのか、下段の真鯉の幼児に玩具のようなものを与え、その子は嬉しげに手を伸ばしている。
本資料は大正期のものであるが、江戸文化の名残がどことなくある。糸綴じであるところは、江戸や明治初期の和装本とのつながりを感じる。絵には洋館らしい建物も見えるが、日本家屋からは錦絵に描かれる江戸の街並みが想起される。
この雑誌は東京、京橋の實業之日本社で発行されているが、当時の東京の街並みは関東大震災被災以前ということもあり、江戸情緒が色濃かったようだ。
太平洋戦争期、この絵の男児たちは30代位の年齢になる。彼らがどのような成人期をおくったのか想像すると、何ともいえないもの悲しい気分になる。