館蔵資料の紹介 2019年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2019年 > 高等小學讀本 第八
池永 厚・西村正三郎 著 辻 敬之 出版
普及舎 發兌 縦22.5×横15.0㎝ 1887(明治20)年
今日でも理科に関係したテーマが小学校国語教科書に掲載されているが、明治期の国語の教科書でも理科的な内容が扱われていた。今回紹介する資料は高等小学校用の国語教科書シリーズの一つである。この時代の高等小学校は現在の小学校5~6年生にほぼ該当するが、内容は相当に高度である。この教科書は理科的な見方を身につけられるように配慮されていたようで、第二には「理科の知識 理科一班」という学習項目があり、理科の学習における観察と試験について説明している。
しかしながら、今回紹介する第八は、理科の学習対象でもある鰐という爬虫類の説明を目的としつつも、国語教科書の特徴を強く打ち出している。もちろん生態、特徴、生息地といった説明はあるが、その一方で鰐が河辺で牛馬を捕食する様子などがいきいきと描写されており、読み手の想像力を搔き立てる。熱帯の河辺に親と子どもの鰐が戯れている挿絵からは物語でも創作できそうである。
末文には、難しい語彙の説明もある。今日的に言えば教科横断的な教科書とでも言えようか。