館蔵資料の紹介 2018年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2018年 > 通常植物
辻 敬之 著 普及舎 発兌
縦22.2×横15.0㎝ 1882(明治15)年
明治期の日本の教育は、ペスタロッチーの実物教授の影響が強い。掛図や絵図を用いて、教師と生徒が問答を行う明治初期の授業形態も、この流れの中にある。明治10年代なると、ペスタロッチー主義の教授法は「開発教授法」としてさらに積極的に唱導されていった。今回、紹介する『通常植物』も「開発教授法」に基づいて編集された博物教科書である。
この教科書は『通常動物』『通常金石』と並んで出版されたもので、1881(明治14)年に制定された『小学校教則綱領』に準拠している。ここでは穀物類、野菜類、果物類、衣料や住居など生活の材料に活用できるものを中心とした他の植物類という順に掲載されており、この時代の教育が実用的であったことが分かる。各植物については種類、部分、性質や効用が簡潔に示されていて、挿絵もある。
本頁は本の冒頭の1頁で、日本の稲について解説している。さまざまな粳(うるち)米、糯(もち)米などの稲の種類や部分が挿絵入りで紹介されており、なかなか興味深い。