館蔵資料の紹介 2018年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2018年 > 日本國産葷辛類一覧
木版色刷 縦36.8×横25.2㎝
文會舎板 明治前期
明治期には、掛図、教科書、学校教育の場面などを題材にした子ども用の錦絵も絵草紙屋の店先に並べられた。本資料は国産の葷辛(くんしん)野菜で構成した錦絵で、1873(明治6)年に文部省が発行した小学校用の「第四博物図」と題する掛図をもとに制作している。「葷辛」の葷はにおいの強い野菜のことで、画面の上半分にネギ、ラッキョウ、ニラ、ノビル、アサツキ、ワケギが描かれている。辛は辛みをもつ野菜のことをさし、ミョウガ、ショウガ、カラシ、トウガラシ、ニンニク、タデ、ワサビが下半分に配されている。
教育的な内容の錦絵は、かなり需要があったようで、多数の版元が創意工夫してさまざまな種類の錦絵を販売した。画面の左端には「定價壱銭五厘」という販売価格がある。明治期の商品の値段を調べた本によると、「まんじゅう」が5厘ほどであったという。小学校は各地につくられはしたが、教科書はまだ広く行きわたらなかったこの時代、子どもたちはこうした錦絵で楽しく学んでいたのであろう。