館蔵資料の紹介 2018年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2018年 > 敎育繪本 魚づくし
富田喜作(画作兼発行) 富田屋書店
縦18.2×横12.2㎝ 1911(明治44)年
「御目出度い」という語呂から鯛は正月や祝いの席での代表的な料理となっているが、今回は真鯛の絵が表紙に描かれた「敎繪絵本 魚(うを)づくし」を紹介する。
1911(明治44)年発行の本資料は「魚づくし」の題名が示す通り、海や川に生息する魚貝類を挿絵で紹介した絵本であり、今日における児童用図鑑の役割を果たしていたのではないかと考えられる。挿絵はすべて色刷りで、本資料の奥付には乾燥油とワニスを融合して着色印刷したとの記述がある。
夏の海水浴をイメージしているのであろうか、真鯛などの魚が泳ぐ環の下に描かれた女性は赤と白の縞模様の服を着て、麦藁帽子を被り、手には蛤のような大きな貝を手にしている。ヨーロッパでは悪者のイメージとして描かれたボーダー柄の服も、20世紀初頭には漁師や船乗りの仕事着やマリンスポーツウェアとして、次第に人々の間に定着していったという。明治末期の日本でも縞模様の服がマリンルックの意味を持っていたことを、この女性の姿は示唆している。