館蔵資料の紹介 2017年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2017年 > 深鉢形土器
東京都町田市御嶽堂遺跡出土
口径15.6×現存高24.6cm 縄文時代中期
町田市成瀬台の御嶽堂(みたけどう)遺跡A地点から、西向きに下る斜面に投げ捨てられたような状態で、土器が多数出土した。
本資料はその中のひとつである。口縁部の一部と底部が欠損しているが、遺存状態は良好である。
1対の橋状把手(きようじようとつて)が口縁に設けられている。この把手の近くに、玉抱(たまだ)き三叉文(さんさもん)と呼ばれる文様がつく。これは中心の凹んだ小さな円を、三つ又の彫り込みではさむ形をとる。
胴部は粘土紐を貼りつけた文様と、それに囲まれるようにへら状の工具で細かく刺突した文様が見られる。
土器はリング状の粘土紐を積み上げて形作るが、本資料の胴部の外面には、その痕跡が横方向に数本認められる。積んだ粘土紐同士を完全に密着させないで、痕を残して装飾効果を狙ったのであろう。
縄文時代中期、関東地方では出土例が多くない新道(あらみち)式の土器で、全体的に優美繊細な造形と相まって、優品といい得る資料である。