館蔵資料の紹介 2016年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2016年 > 原智恵子の船旅用大型トランク
真鍮・鉄・木材・革・布
縦51×横82×高57cm 1930年代
ピアニスト原智恵子(1914~2001)は、現在の神戸市須磨に生まれた。13歳のときにピアノの研鑽のため、父親の知己で画壇の大御所、有島生馬に連れられパリへ留学する。1930年にパリ音楽院に入学、わずか2年後には同音楽院を日本人初となる1等賞首席で卒業し帰国、1933年2月9日に日比谷公会堂にてデビューリサイタルを開催した。1935年フランス政府給費留学生として再び渡仏。パリ音楽院時代の恩師ラザール・レヴィや当時人気絶頂だったピアニスト、アルフレッド・コルトーのもとに学び、1937年第3回ショパン国際ピアノコンクールに日本人として初めて出場、聴衆の支持を得て特別賞を与えられる。
この頃の海外渡航といえば船旅で、衣服など身の回りの品は大型トランクに詰めた。トランクの角や側面は金属で補強されて鋲が打ち込まれ、長旅や荒波の揺れにも耐えうる頑丈なつくりが見てとれる。擦りきずや持ち手の革の部分に見られる劣化、破れかけた貼り札やラベルが、当時の旅の様子を伝えている。