館蔵資料の紹介 2016年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2016年 > ガスパール・カサド作曲 スペイン古典様式によるソナタ
ガスパール・カサド自筆手稿譜
縦33.0×横24.3cm 1925年
《スペイン古典様式によるソナタ》は、1924年4月に完成し、翌1925年にその初版がユニヴァーサル・エディションから刊行された。この曲は、故郷のスペインからイタリアに居を移し、作曲や演奏会など精力的に活動していたガスパール・カサド26歳のときの作品。精緻をきわめた楽譜は作曲者本人によって書かれたもので、最大の理解者であり庇護者でもあったイタリア・シエナの貴族グイド・キージ・サラチーニ伯爵に捧げられた。
優雅さと慈悲深さを感じさせる主題から舞曲風の2拍子へと移る第1楽章、威厳に満ちた第2楽章、舞踏会を彷彿とさせる軽やかで伸びやかな主題の第3楽章から成る。曲全体を通した格調高い調べは、望郷の思いを感じさせると同時に、人格者であるキージ伯爵その人を浮かび上がらせるようだ。キージ伯爵は、1932年にキジアーナ音楽院を設立。ここから才能ある若い音楽家が多く羽ばたいている。
全体の演奏時間は約15分、今日まで演奏され続けているカサドの代表的作品のひとつである。