館蔵資料の紹介 2016年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2016年 > 廣瀬淡窓筆蹟「藹山(あいざん)の画に題す」
紙本墨書 縦135.0×横28.2cm 掛軸装
江戸時代後期 保利耕輔氏寄贈資料
豊後国日田(現大分県日田市)で私塾咸宜園(かんぎえん)を開き、全国各地から多く門弟を集めた廣瀬淡窓(1782‐1856)は、優れた教育者としてだけでなく、江戸時代を代表する漢詩人としても知られている。この書は、淡窓の漢詩集である『遠思楼詩鈔』(二編巻下)にも所収されている漢詩である。「夏木新隂を結ぶ 蔥籠殊(そうろうこと)に喜ぶ可(べ)し 蝶心猶(なお)春を戀(こい) 墻角(しょうかく)一花の紫」と読み、「夏の樹木には葉が茂り、新たな陰をつくっている 青く茂るさまは特に喜ばしい 蝶の心はなお春を恋しているようだ 垣根の角には紫色の花が一輪咲いている」という内容になる。
「藹山の画に題す」とは、富山生まれで、京都で活躍した画家の谷口藹山(1816‐99)の描いた絵に題した詩という意味である。藹山は1844年頃、咸宜園で淡窓に師事した。漢詩人として名をはせた淡窓は、人格の形成には学問だけでなく、物を見る目を養い、感性や想像力をはぐくむことが重要として、門弟に詩作教育も実践している。