館蔵資料の紹介 2016年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2016年 > 幼算問答 分課問題(ようさんもんどう ぶんかもんだい)
森田喜三郎誌 下京第拾壹組内有志刻
木版墨刷 袋綴装 全13丁 縦22.4×横15.4×厚0.2cm 1871(明治4)年9月
本書は、明治初期に刊行された小学校用の算術教科書である。著者の肩書に、「下京第拾壹小学校算術師」とある。同校は、1872(明治5)年の学制頒布に先立つこと3年、京都の町衆が協力して開設運営した64校の番組小学校のひとつで、後に開智小学校と改称された。
「仁 有志」「義 火防」「礼 小学」「智 商社」「信 会議」の5課に分かれ、テーマ毎に校区である町(下京第11番組)の事情に即した乗除法の文章題が、各7問出題されている。例えば有志の第3問は、「四人ノ有志ヲ問フニ甲ハ七百六拾両乙ハ四百廿両丙ハ三百拾両丁ハ二百両出シ今壱人ニ救米壱升六合ニシテ其人数何程ト問 但シ米壱石五両」とある。義捐金(ぎえんきん)で食糧配給を受けられる人数を求める問題で、(760+420+310+200)÷5÷0.16=21125という式で表せる。小数の割算を扱うことから、現在の小学校第4学年レベルの問題といえようか。
開智小学校は、1992(平成4)年に京都市立洛央小学校に統合され、旧校地校舎は、京都市学校歴史博物館として活用されている。