館蔵資料の紹介 2015年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2015年 > 小供風俗 いくさごっこ
宮川春汀 木版色刷
縦37.2×横25.0cm 1897(明治30)年
戦争の本当の悲惨さを体験していない子どもは戦争に何ともいえない魅力を感じ、遊びにしてしまう。今回はこうした子どもの遊びを描いた宮川春汀(みやがわしゆんてい)の「いくさごっこ」を紹介する。
画面手前には武者に扮した子どもが描かれている。鉢巻をして敵を威嚇している子もおり、遊びといえども、画面に緊張感がある。一人の子どもは源氏の白旗を掲げている。大将役、騎馬役、武将役と様々な役割の子どもが描かれているが、彼らはその役割をどうやって決めたのであろうか。
一方、対峙する少年たちは明治の帝国陸軍を模しているのであろう。旭日旗のもとで、ラッパ手もいれば、木馬にまたがった洋装の子どもの姿もみえる。しかし、その一方で槍を構え、兜をかぶった者もいるなど恰好には時代の差がある。
子どもにとっては戦国時代も近代戦も関係ない。侍や軍人の気分になって、胸のすくような遊びに興ずればよいのである。このような集団の遊びを通して、子どもは社会性を自然に身につけていったのであろう。