館蔵資料の紹介 2015年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2015年 > 子供あそび せうぶ(しょうぶ)うちの図
作者不詳 大判錦絵2枚続き
縦35.8×横48.5cm 1868年頃
端午の節句は、菖蒲の節句とも言われるように、菖蒲がさまざまな形で登場する。もともとは菖蒲湯、菖蒲酒、菖蒲枕など、その薬効を利用していたが、強い香気で邪気をはらうとされることから、軒に菖蒲を挿したり、頭にかぶったりする風習も生まれた。さらに菖蒲を尚武という言葉にかけて、勇ましい鎧や兜を飾り、鯉のぼりや幟を立てて、男の子の成長や出世を願う行事になっていった。
この錦絵には、男の子たちが菖蒲の葉を編んで縄状にしたものを地面に打ちつけ、大きな音を競い合って遊ぶ「菖蒲打ち」の様子が描かれている。背景には鯉のぼりや鍾馗(しょうき)、豪傑を描いた幟も立てられている。ただし、本作は子どもの遊びを描きながらも、1868(慶応4/明治元)年戊辰の年にはじまり、翌年まで続いた戊辰戦争を風刺している。画面の右側は旧幕府軍、左側が新政府軍になり、描かれた子どもや女性の着物の柄には各藩をあらわす紋や文字、特産物などが描かれ、当時の情勢を巧みに表現している。