館蔵資料の紹介 2015年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2015年 > 小供風俗 ままごと
宮川春汀
木版色刷
縦37.0cm×横24.8cm
1896(明治29)年
ままごとは子どもにとって実生活の模倣というだけではなく、創造力を養うための大切な遊びだ。ままごとの歴史は古く、平安時代には「雛あそび」の道具を用いたままごとのような遊びがあったと『紫式部日記』の中の見聞として記されている。
今回紹介する資料は、明治期のままごと遊びを描いたものだ。あじさいの花が咲き、蝶が舞っているところをみると季節は初夏であろうか。和服を着た2人の女児がままごと遊びに興じている。紫色の着物を纏った子どもは野草を使って野菜を切るしぐさをしており、もうひとりの子どもは玩具のお膳を運んでいる。2人は視線を合わせて楽しそうに言葉を交わしており、ほのぼのとした情景である。
この資料には「明治29年6月10日 印刷」と記されている。前年には日本と清国との間で下関条約が結ばれるなど、日本の近代化が進んでいく時期にあたるが、作品には江戸の情緒すら漂わせる自然豊かでのどかな風景が表現されている。