館蔵資料の紹介 2014年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2014年 > 子供遊皐月のたわむれ
歌川芳藤(1828-1887)画 大判錦絵2枚続
古賀屋勝五郎 版 和紙に木版色刷
慶応4(1868)年6・7月改 縦37.2×横48.8cm
「子供遊び絵」という、幕末維新期の政情や戊辰戦争の戦況を、子どもの姿で諷刺(ふうし)した一連の錦絵版画が存在する。本資料は、その一例である。
題名が示すように、端午の節供に遊ぶ姿で、慶応4年5月の江戸・上野の山の戦いの様子を表す。新政府方の諸藩が、山上の旧幕府方の奥羽諸藩に攻め上る様子を描くが、実際に上野戦争を戦った幕府方は、旧幕臣の彰義隊(しょうぎたい)が中心で、奥羽諸藩ではない。本資料の改印(あらためいん)(検閲印)は同年6、7月の刊行を示すが、この頃には新政府軍は奥羽地方に迫っていた。そのため、守り手を奥羽諸藩に置き換えて描いたものと想像される。
藩主の家紋や領地の名産品、地名に因むものが衣服の柄に描かれ、どの子どもが何藩かがわかるようになっている。
山上に会津(名産の蝋燭)、桑名(蛤)、庄内(酢漿草(かたばみ)の家紋)、米沢(米の字)等の諸藩がいる。山の下には薩摩(名産の井絣(いがすり))、長州(地名の萩の花)、彦根(橘の家紋)等がおり、名産の大根柄の尾張藩に肩車された赤い着物の子どもが、明治天皇を表している。