館蔵資料の紹介 2014年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2014年 > 3枚折ブロンズ製イコン (聖母マリヤ・キリスト・授洗者ヨハネ)
ロシア・イコン 材質 ブロンズ、七宝
1700年頃 縦16.5×横42.0cm
このイコンは、鋳造によるレリーフ状のブロンズ板に白と濃紺の七宝を施してつくられている。中央はキリスト、左は聖母マリヤ、右は授洗者ヨハネである。中央のキリストに向かって、マリヤとヨハネが罪深き人間のためにとりなしの祈願をする構図は、デエシス(ギリシャ語で懇願するの意)と呼ばれる。
キリストの右手は祝福をあらわし、左手には神の教えを示す聖書をもつ。聖母とヨハネを左右に伴い、時には他の聖人や天使も描かれるデエシスは、ビザンティン美術および正教会のイコンにおいて重要な図像である。正教会の聖堂では、デエシスのイコンがイコノスタス(聖障)の王門の上に掲げられる。
中央のキリストのパネルには、上部に紐を通すための穴をもつ突起が2つ付いている。3枚は蝶番で開閉できるようになっており、折りたたむと幅が14cmほどになる。このような折りたたみ式の金属製イコンは、板にテンペラ絵具で描かれたイコンに比べると丈夫であることから、旅行など家を離れる際の携帯用としてつくられた。